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ISASコラム

宇宙・夢・人

わくわくしながら働きたい

(ISASニュース 2013年6月 No.387掲載)
 
契約部 相模原契約課 橋 茜
たかはし・あかね。1987年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部語学科卒業。2011年、JAXA採用。契約部相模原契約課配属(取材時)。2013年6月より広報部(筑波宇宙センター)へ異動。
Q: 語学科の出身ですね。言葉に興味を持つようになったきっかけは。
小学生のとき、日本語・英語・フランス語の3ヶ国語を話せる友人がいました。頭の中で3ヶ国語をどうやって切り替えているのだろうと不思議に思い、言葉に興味を持ちました。祖父の家で読んだ本も印象に残っています。アメリカ大陸先住の小さな民族の最後の1人が亡くなり、その民族の言葉を話す人がいなくなってしまった、という話です。一つの言語がなくなってしまうことがあるのだと衝撃を受けました。
Q: 大学ではどのようなテーマに取り組んだのですか。
2008年から1年間、カナダのアルバータ大学に留学しました。カナダの英語は米国の英語に似ていますが、独特の使い方があります。例えば、同じ単語で米国と英国でスペルが違うものがあり、カナダではある単語は米国式、別の単語は英国式と混在しています。どのように使い分けているのかを卒業論文の研究テーマにしましたが、納得のいく結論には達しませんでした。
そもそも人はどうやって言葉を覚えるのか、とても不思議ですよね。言葉は人間を人間たらしめている重要な要素。今でも言葉には興味があります。
Q: 就職活動はどのように進めたのですか。
リーマン・ショック後の就職氷河期が続いていました。いろいろな企業を受けましたが、なかなかうまくいかずに悩む中で、“本当に自分がやりたいことは何だろう”と考えました。自分自身と腹を割って話した結果、私は誰かにものを売る仕事は得意ではないし好きでもない。では、ものを売らない仕事には何があるのだろうと、大学の就職課で求人票を見直しました。メーカーや商社、金融など業種ごとにファイル分けされている中で、「その他」にあったJAXAに目が留まりました。実は小学生のころ、星座や宇宙の謎について書かれた本を読むのが好きでした。宇宙研究・宇宙開発の最前線にいる研究者や技術者を支援する仕事がしてみたい、とJAXAを受けました。なぜ採用されたのかは、いまだに謎です(笑)。
Q: 仕事は順調ですか。
JAXAで働き始めてすぐに宇宙研の相模原契約課に配属されました。契約について何も知識がなかったので大変です。特に、外国との契約担当は私1人。英語による契約交渉は、相談できる人が限られていて、孤独を感じるときがあります。昨年、米国の民間企業と前例のない内容の契約を進めたときは、とてもつらかったですね。相手がどんな企業かよく分からず、参考になる契約資料もほとんどありません。パニックになって、夜中に泣きながら書類をつくったことがありました。
Q: 仕事の面白さを感じることは。
1年目のころは、海外の大学との契約を担当することで、こんな共同研究が始まるんだ、とわくわくしました。でも、いつしか目の前の仕事に忙殺されて、そのような感動がなくなってしまいました。とても、もったいないことだと思います。
研究者や技術者から契約内容の背景となる情報を含めてじっくりと話を聞くことで、わくわく感を味わうとともに、より良い形で契約を結ぶことができるはずです。しかし、時間と心に余裕がまったくありません。
Q: なぜ、それほど忙しいのですか。
仕事の手際が悪いこともありますが、入社3年目の私が、多忙な大先輩の先生方に「この書類を書き直して!」とは、なかなか言えません(笑)。英語が関係するという理由で、業務外の仕事が回ってくることもありますね。
Q: どうすれば余裕を生み出せますか。
業務の中には不要だと思われる手続きや分かりづらいシステムもあり、改善の余地があると思います。研究者・技術者と事務系職員が、互いの仕事内容や業務の範囲、スケジュールを理解し合うことも重要だと思います。宇宙研の良いところは、他部署で年齢が上の方とも話をしやすい雰囲気があることです。交流を深めることで相互理解が進み、業務の効率も向上して余裕が生まれるはずです。私は他部署の人によく話し掛けます。そうして知り合った方が、ある契約で困っているとき、その分野の情報を教えて助けてくださったことがあります。
宇宙研で進めている研究は世界最先端のものです。せっかく、こんなに面白い組織にいるのですから、もっと楽しく快適な職場にして、日々、わくわくしながら働きたいですね。