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ISASコラム

宇宙・夢・人

“宇宙×大学・研究機関”連携の花を咲かそう

(ISASニュース 2013年4月 No.385掲載)
 
大学・研究機関連携室 主任 藤島 徹
ふじしま・とおる。1967年、神奈川県生まれ。日本大学理工学部航空宇宙工学科卒業。日本宇宙少年団、学習塾講師などを経て、日本宇宙フォーラム。2011年4月よりJAXA大学・研究機関連携室へ出向。
Q: 大学・研究機関連携室とは?
日本の宇宙航空分野の研究活動をさらに推進するために、JAXAと大学・研究機関との連携を強めていこうというのが、大学・研究機関連携室の目的です。宇宙航空や宇宙科学の分野では、JAXAはこれまでも大学や研究機関と連携して研究開発を行ってきました。それらの連携を強化するとともに、これまであまり関わりがなかった人文社会科学分野との連携にも力を入れています。
Q: どのように新しい連携を築いていくのですか。
JAXAでは、さまざまな分野のシンポジウムや研究報告会などを開催しています。参加した人文社会科学の研究者から、もっと詳しい話を聞きたい、自分も宇宙に関わりたい、という問い合わせをいただくことがあります。まず、興味を持ってくださった研究者のところに出掛けていき、話を聞くことから始まります。研究内容などいろいろな話をしていく中で、どういう関わり方ができるかを模索していくのです。「子どものころから宇宙が好きだったんですよ」という研究者も多く、話がついつい弾み、いつも予定の時間をオーバーしてしまいます。
Q: なぜ人文社会科学との連携が必要なのでしょうか。
例えば日本が有人宇宙飛行をしようとしたとき、技術だけあれば実現できるわけではありません。日本の宇宙開発は税金を使っていますから、国民の皆さんの理解・支援が不可欠です。そのためには、人文社会科学の視点からも人類が宇宙に出ていく意味や宇宙開発の意義を議論することが必要だと考えています。
2011年には神戸大学大学院国際文化学研究科と研究協力協定を締結し、京都大学宇宙総合学研究ユニットとの共同研究も進んでいます。人文社会科学の研究者とつながりができ始めましたが、まだ種をまいた段階です。大きく育て、早く花を咲かせたいですね。
Q: これからどのように連携を進めていこうとお考えですか。
JAXAは、理工系の連携を中心に、10を超える大学・研究機関と包括連携協力協定を締結しています。しかし、協定はJAXAと大学・研究機関の1対1の関係です。JAXAと協定を結んでいる大学・研究機関同士で横のつながりをつくりたいと思っています。すでに航空や地球観測をテーマに実施し、現在は新たなテーマでその準備を進めているところです。
Q: 子どものころ、どういうことに興味がありましたか。
乗り物が大好きでした。自転車から車、電車、飛行機、そしてロケットまで、あらゆる乗り物の動く仕組みに興味がありましたね。なりたい職業はずっと飛行機の整備士。大学は迷わず航空宇宙学科に進みました。
Q: 大学卒業後、日本宇宙少年団(YAC)に就職されました。
飛行機の整備士は狭き門で、断念せざるを得ませんでした。もう一つのやりたいことが、教育でした。実はそれまでYACの存在を知らなかったのですが、子どもたちの空や宇宙への夢を一緒に育てていくところだと聞き、やりたかったことが両方できると思って門をたたきました。
充実した日々を過ごしていましたが、教壇に立ちたいという思いを捨て切れず、学習塾に転職しました。毎週行っていた理科実験のイベントでは、指導する私自身が多くのことを学びました。子どもの理科離れが進んでいるといわれますが、実際はそんなことありません。興味をうまく引き出していけば、子どもたちの目はきらきらしてきます。実は、大学・研究機関との連携も同じ。研究者の興味をいかに引き出すかが重要です。
その後、もっと宇宙に関わりたくなり日本宇宙フォーラムに転職し、「きぼう」日本実験棟での実験を目指した研究のマネージメント業務や、相乗り小型副衛星の事務局支援などを担当してきました。全国の大学の研究者とつながりができ、今の仕事にとても役立っています。
Q: 休みの日は何をしていますか。
YAC横浜分団のリーダーとして、毎月、実験・工作などの体験プログラムを行っています。依頼があれば出張授業もします。アシスタントは5歳の娘です。準備もあるので休日がほとんどつぶれてしまいますが、子どもたちの「楽しかった」という言葉を聞くと、とてもうれしいですね。実際に物事に見て・触る「本物体験」は大切です。体験の中から興味のあるものを見つけ、自分で調べて考え、将来を設計してくれたらいいなと思います。
Q: 仕事をする上でのモットーはありますか。
宇宙開発を進めることは、必ず豊かで安全な社会につながります。私は、そういった社会をつくるべく、日本の未来のために仕事をしていると考えています。