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ISASコラム

第13回:運用と施設設備(5)イプシロン管制センター(ECC) 餅原 義孝 基盤技術グループ 副グループ長/主任開発員 イプシロンロケットプロジェクトチーム

(ISASニュース 2013年1月 No.382掲載)

 内之浦宇宙空間観測所(USC)において、これまで科学衛星を打ち上げてきたM型ロケットでは、発射点と同じ台地にあるブロックハウス構造のM管制室にてロケット打上げまでの射場作業の全体進捗をつかさどる運用をしてきました。イプシロンロケット打上げに向けて、よりいっそうの安全性・運用性の向上を目指し、新たな運用拠点としてイプシロン管制センター(Epsilon Control Center:ECC)を宮原地区のシュミット望遠鏡跡地に建設中です。

 ECCには、ロケットの作業をつかさどる発射管制室、衛星の作業をつかさどる衛星管制室、気象に関する情報が集約される気象室、事務系の各種業務を行う企画調整室、打上げ実施責任者室、会議室などが設けられます。M台地、レーダテレメータセンター、34mφアンテナなどUSCの各センターとは、光ケーブルのネットワークにてつながれます。また、ハンズフリーで会議通話ができる指令電話を配備し、USC各センターのほか、相模原、種子島、つくばの各サイトと作業に係る相互通話を行います。

 今回は、このECCの概要を紹介します。



発射管制室

 ロケット打上げまでの全体作業の進捗をつかさどる指揮所となる部屋です。主な役割は以下の通りです。

  • 発射管制設備(LCS)による、ロケットシステムの健全性確認および発射データ設定
  • M型ロケット発射装置の遠隔操作によるロケットの射座セット
  • 打上げ時刻の設定
  • 作業監視用カメラシステム(ITV)による、ロケット・衛星の整備組立て・点検作業や打上げ作業の監視
  • 打上げ管制担当者による打上げ作業の全体指揮


衛星管制室

 M-VまでのMチェックアウト室と34mφアンテナ、衛星テレメータセンターで行っていた機能を集約し、衛星の整備組立て・点検作業や打上げ作業、ならびに打上げ後の初期運用をつかさどる指揮所となる部屋です。主な役割は以下の通りです。

  • 衛星管制設備による、衛星システムの健全性確認(状態監視)および打上げデータ設定、ならびに軌道上衛星の追跡運用
  • 電源設備の遠隔操作による衛星への外部電源供給、搭載バッテリーの補充電、有線ラインでの各種衛星監視制御
 なお、衛星管制設備には、衛星運用・データ利用センターが衛星搭載のデータ処理系アーキテクチャ更新に対応する地上システムとして開発した、汎用衛星試験運用ソフトウェア(GSTOS)を新たに適用する計画です。



気象室

 USCの気象観測システムは、

  • 既設の風向風速計の活用
  • 既設の雨雲観測気象レーダの設置場所見直しによる最適化
  • 雷観測システムの更新
  • 発射点近傍に雨量計、温湿度計、気圧計、雲底高度計、地震計など各種センサを新たに整備
等々を実施してさらなる充実化を図り、予報の精度向上を目指します。イプシロン打上げにおいては、これらの情報を気象室に集約して気象予報を行います。

 また、ロケット打上げ時のプログラム再設定(最適な姿勢プログラムへの修正)を行うためのゴム気球を用いた高層風観測データも、気象室に集約します。


図1 完成間近のイプシロン管制センター(ECC)


図2 発射管制室のイメージ


(もちはら・よしたか)