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ISASコラム

(第6回:ISASニュース 2013年8月 No.389掲載)

イプシロンロケットTVC試験

イプシロンロケット試験機の打上げまであとわずかとなりましたが、6月末には1段モータの推力方向制御装置(TVC)試験が実施されました。

今回の試験は1段TVCの健全性の確認試験です。外観検査だけでなく、内之浦に搬入した後に実際にTVCを駆動させ、1段モータのTVCの機能・性能が以前の試験と変わらないことを確認しました。

1段TVCは、電動アクチュエータによってノズルの向きを変えることにより、1段モータ燃焼中のピッチ、ヨーの姿勢制御を実施するものです。2段目以降と異なり、ロケットの1段目燃焼中は大気中を飛行するため、ロケットは空力トルクの影響を受けます。また、突風などの外乱に対しても姿勢を維持しなければならないため、この1段TVCの制御はロケットの飛行制御で最も重要で、最も難しい部分です。そのため、今回の試験は、ロケットの射場作業の中でも、最も重要な試験の一つといえます。

試験ではまず、ノズルを最大舵角で振って、まわりの機器との干渉がないかをチェックしました。その後、いろいろなパターンでノズルを動かし、その応答を取得しました。私も駆動試験中は、ノズルの動きにおかしなところがないか、じっと目を凝らしてその動きを観察しました。当然のことですが、ロケットの姿勢制御系は、ノズルの動きの特性を考慮して構築されているため、ノズルがただ単に動けばよいというものではありません。ノズルの動きの特性が変わってしまうと、姿勢制御系が発散し、最悪の場合ロケットの姿勢は不安定となってしまいます。

TVCの応答の結果は、過去の試験結果とおおむね一致し、試験の結果は良好でした。イプシロンロケットの核ともいえるこの1段TVCの健全性が射場で確認されたことで、打上げに向けて大きく前進することができました。私自身も今回の試験に参加し、イプシロンロケットが大空に向けて打ち上がる姿がますますリアルに想像できるようになりました。(佐伯孝尚)