金星軌道上の太陽光強度は地球近傍の約2倍に達します。太陽電池パネルが高温になると、構造部材の強度低下や太陽電池の変換効率低下を招くため、例えばESAのVenus Expressでは太陽電池セルとOSR(Optical Solar Reflector)という鏡のような材料とを一列おきに貼り、温度上昇を防いでいます。しかし「あかつき」は当初M-Xロケットによる打上げを予定していたため、表面にOSRを貼るだけの面積は確保できませんでした。そこで、表面は太陽電池セルで覆う代わりに、パネル基材であるアルミハニカムコアを通常より薄く高密度にすることで、排熱効率を高めました。裏面は全面をOSRで覆い、金星アルベドによる熱入力を抑制しました(図1)。その結果、太陽電池パネルの設計温度はプラス185℃に抑えられ、各種試験により性能が確認されました。