いったいそんな系は現実に存在するのだろうか?
現実の世界には完全な慣性系は存在しないが、
加速度運動による慣性力と重力は区別できないという
等価原理によって、重力と慣性力を打ち消しあった、局所慣性系を定義することができる。
局所慣性系を作るもっとも手っ取り早い方法は、重力に身を任せてしまうことである。
たとえば、宇宙空間に浮かんで、加速、減速はせず、いろいろな
天体からの重力に身を任せている宇宙船の中や、綱の切れたエレベーターの中は局所慣性系である
(いわゆる「無重力状態」)。宇宙に行くと重力がなくなる、と言うことはないことに注意。重力は
宇宙のどこにでも存在する(万有引力の法則!)。重力に身を任せて自由落下することにより、重力の効果を
打ち消すことはできる、というのがポイント。
たとえば、宇宙空間に漂っている(=加速も減速もしていない)巨大な宇宙船を考えて、 その中に互いに等速運動している局所慣性系を考えると、 そのあいだの座標変換はローレンツ変換で与えられる。 慣性系は局所的にしか存在できないことは、以下の思考実験でわかる。 遠方から地球に向かって自由落下する宇宙船を考えよう。あるいは、綱の切れたエレベーターの中でも良い。 ボールを4つ等間隔に配置する。 もしこれが完全な慣性系で空間が歪んでいないならば、ボールの間隔は変化しないはずだが、 それぞれのボールは地球の中心に向かって落ちていき、地球の中心に近いほうが 重力加速度は大きいので、やがてボール間の横方向の間隔は縮み、 縦方向の間隔は伸びる。
このように、一つの系の中で場所によって重力が異なることによって
見かけ上生じる力を潮汐力と言う。潮汐力によって4つのボールの配置が
変化した、と考えても良いし、重力の影響で、時空が平坦でなくなったと考えても、
全く同じ事である (等価原理により、両者は区別できない)。
潮汐力の影響が無視できるほど小さな領域で局所慣性系を定義することができ、それに相対運動する
局所慣性系
との間の座標変換はローレンツ変換で与えられる。
一方、潮汐力の影響が無視できないほど大きな空間を含んだ系
を定義すると、そこでは
ニュートンの第一法則がなりたっていないので、これは慣性系ではない。
一般に、
グローバルな慣性系は定義できない(時空は一様でない)ので、(117)は成立せず、
代わりに、二つの局所慣性系座標の間に、