軌道六要素で衛星の軌道とある時刻における位置を表わすことができるわけだが、それと等価な情報と さらに衛星名、国際識別番号などを付加した情報を記述する、Two Line Elements (TLE)と言う標準的なフォーマットがある。
NORAD (NORth American aerospace Defence Command; 北アメリカ航空宇宙防衛司令部;httm://www.norad.mil)は、 地球の周りを周回している(ほぼ)すべての人工衛星をモニターし、その軌道要素をTLEで公開している。 TLEの説明については、 https://science.nasa.gov/Realtime/rocket_sci/orbmech/state/2line.htmlを参照。そこからTLEの定義を再掲する。
軌道長半径の代わりに、一日あたりの周回数である、''Mean Motion''が使われていることに注意。
いくつかの衛星について、具体的なTLEの値を見てみよう。現在地球を周回している衛星の最新のTLEは、たとえば
https://celestrak.comから入手できる。
SUZAKU 1 28773U 05025A 08013.93865221 .00000558 00000-0 37528-4 0 6575 2 28773 31.4061 323.8498 0007001 164.9250 195.1602 15.00529329137995 ASTRO-F (AKARI) 1 28939U 06005A 08014.23580039 .00000005 00000-0 11192-4 0 6030 2 28939 98.2316 16.5778 0008622 0.3484 359.7729 14.57435459100351 HINODE (SOLAR-B) 1 29479U 06041A 08013.94377495 .00000087 00000-0 26130-4 0 4426 2 29479 98.0789 23.2007 0014564 229.4553 130.5382 14.62802560 69920 INTEGRAL 1 27540U 02048A 08012.45833333 .00000061 00000-0 10000-3 0 6500 2 27540 86.3672 23.5282 7969010 276.7243 358.3858 0.33418208 2558 HIMAWARI 6 1 28622U 05006A 08014.77456198 -.00000264 00000-0 10000-3 0 4588 2 28622 0.0211 76.8046 0002163 49.6656 46.0362 1.00271868 10549これから、以下のことが読みとれる。(1)すざく(X線天文衛星)、あかり(赤外線天文衛星)、ひので(太陽天文衛星)は、一日に約15周回する、低軌道衛星である。ひまわりは 一日に一周回する、静止衛星である。INTEGRAL衛星は三日で一周する、大きな軌道である。(2) INTEGRALは離心率が大きな楕円軌道を持つが、 他の衛星はほぼ円軌道である。(3)すざくの軌道傾斜角は、ぎんがと同じく、内之浦から真東に打ちだしているので、内之浦の緯度に対応して 31.4度である。ひまわりは赤道上の静止衛星なので、軌道傾斜角は0度。あかり、ひのでの軌道は、赤道とほぼ直交している。はこの二つの衛星は 太陽同期軌道を持ち、軌道面が常に太陽を向いていて、ちょうど昼と夜の境目を周回している。それによって、ひのでは常に太陽を観測することが 可能である。一方、あかりは、つねに地球と反対向きの空を観測することが可能になっている
巷に、TLEから衛星軌道を計算したり表示させたりするプログラムが溢れている。 たとえば、https://science.nasa.gov/Realtime/jtrack/3d/JTrack3D.html、 https://www.lizard-tail.com/isana/lab/googlesat/googlesat2_plus.phpなどを参照。前者は、衛星の軌道を3次元的に表示し、そのスケールや向きをインターアクティブに変更できる。 後者は、Google map上に衛星の位置をリアルタイムで表示できる。