背景 : サブストームとは
オーロラは、極域の超高層大気中で発生する現象である。しばしば、真夜中付近で突然、明るくなり、激しく動き、爆発的に広がる。この現象は、オーロラ爆発と呼ばれ、この時、地上では地磁気の乱れが生じ、磁気圏でも激しい変動が見られる。
これらの擾乱のもとになるエネルギーは、太陽から太陽風によって運ばれてくる。太陽風の磁場と地球の磁場が昼側の磁気圏前面で相互作用をすることにより、太陽風のエネルギーが地球の磁気圏の中に入る。このエネルギーは、磁気圏尾部と呼ばれる、磁力線が尾のように引き伸ばされた夜側の領域に、いったん蓄えられる(図1参照)。ある程度蓄積され、磁気圏尾部で何かが起こると、エネルギーは急激に解放される。一部のエネルギーは地球の方にもやって来て、オーロラ爆発を引き起こす。この一連のエネルギー解放の過程をサブストーム(オーロラ嵐)と言い、平均して一日に数回、発生する。
サブストームが磁気圏尾部のどのような物理現象によって引き起こされるかは、磁気圏物理学における未解決の大問題の一つである。数十年にわたって研究され、様々な説が提唱されてきたが、現在も激しい論争が続いている。
統計解析
そこで、このサブストーム発生機構に関する問題の解決に向けて、サブストーム開始前後の磁気圏尾部全体の時間発展を調べた。ここでは、3787 例ものオーロラ爆発前後の、Geotail、Polar、GOES 衛星によって得られた磁気圏尾部・内部磁気圏におけるプラズマ流・磁場・電場・全圧力などの様々な物理量を統計的に解析した。これらの数値データは、Geotail グループや NASA の CDAWeb から全観測期間分をあらかじめ手元に用意しておいて、自分のパソコンを用いて対象時間帯のデータを処理した。オーロラ爆発の事例は、Polar、または、IMAGE 衛星によって得られた紫外線オーロラの画像をもとに目で見て選ばれたものを使用した。今回の統計解析は、10 年にも及ぶ長年のデータの蓄積(特に Geotail)があったからこそ、成し得たものである。
解析結果
この解析により、以下のような結果を得た。図2は、主な解析結果である。図3は、本研究で得られた結果のまとめである。