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第45号 1997年7月7日発行

目次


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はるか」のデータ処理

 1997 年 2 月 12 日に M-V ロケット 1 号機により打ち上げられた MUSES-B は、無事衛星となり、 「はるか」と命名されました。「はるか」は、地球上の電波望遠鏡と共同で VLBI (超長基線干渉計 ) 観測を行うことにより、今まで得られなかった天文観測データを出すことができます。

 【「はるか」のデータ】「はるか」のデータは、S 帯 ( 2.2 GHz ) と Ku 帯 ( 14〜15 GHz ) の 2 バンド で地上におろすことができます。 S 帯の運用と Ku 帯の運用は別の局を使って行われます。衛星のテレメトリ / コマンド運用は、S 帯で鹿児島宇宙空間観測所 ( KSC ) の 20 m アンテナを使い、天文観測データは、Ku 帯を使用して伝送されます。

 「はるか」の観測データは、128 M bps と高速であるために、データを蓄積し、日本の追跡局でデータを下ろすという従来の方式はとることができません。VSOP (「はるか」を使った VLBI 観測のこと)計画では、観測時間を確保するため、宇宙研の臼田局 ( 10m アンテナ) に加え、NASA / DSN のゴールドストーン局、マドリッド局、キャンベラ局、さらに NRAO ( 米国国立電波天文台 )のグリーンバンク局の計5局で Ku トラッキングネットワークを組織し、データをリアルタイムで地上に送信し、全時間の約 75 % の観測時間を確保できています。衛星から発生するデータ量は、1日に約 1 T byte (1兆バイト) になります。このデータをネットワークで相模原に送る試みも行なわれていますが、通常の運用では Ku トラッキングネットワークで受信された観測データは、磁気テープに記録され、国際宅急便等を用いて各相関局に送られます。また、同時にスケジュールや追跡ログ関係は、インターネットを利用して送られます。昨今の米国との回線の遅さは、運用に影響が出始めています。

 【相関処理と相関器】「はるか」による VLBI 観測では、衛星のほかに地上の電波望遠鏡も観測に参加し、衛星と同じ発生率でデータを出力します。したがって、1 日に発生する VSOP 観測のデータ量は、1 T byte x 観測局数 ( 5〜10 局) で、約 5 〜 10 T byte にもなります。これらのデータに対して最初に行う処理が、相関処理です。

 相関処理は、各望遠鏡(「はるか」を含む)での、デジタル信号に変換された天体からの電磁波の山と山、谷と谷が合うように合成し、疑似的に電磁波の焦点を結ぶようにします。普通の望遠鏡が凹面鏡や凸レンズを使って光学的に行っていることを、相関器は計算機のなかで疑似的に行っているのです。疑似的に電磁波を焦点に集めるには、電磁波の山と山がちゃんと重なるように時間を合わせ込む必要があります。 VSOP 観測の場合は、数 n sec (10 億分の1 秒) 程度の時間差で合わせ込まなければなりませんが、これは至難の技です。実際には相関器は、この時間差の約 1000 倍の時間範囲について同時に焦点での電波強度を計算するように設計されているので、時間差を数マイクロ秒程度に合わせ込むことができれば、焦点を結ぶことができます。この数マイクロ秒でも衛星となると難しく、各 Ku トラッキング局は高精度位相伝送を「はるか」に対して行うことにより高精度の軌道決定を行って、上記の時刻補正精度を達成しています。

 【相関処理後のデータ処理】 相関処理の終ったデータの処理は AIPS という、電波干渉計用の画像処理ソフトウェアパッケージを使って処理を行います。この AIPS は、NRAO の VLA のデータ処理のために開発されたパッケージで、電波天文学の分野では、もっとも広く使われています。ほとんどの UNIX 環境で稼働しており、VSOP の観測者は、相関処理結果データを受け取ったあとは、AIPS を利用して自分の研究室でデータを処理することができます。

 以上の処理を行って得られた「はるか」+ 地上望遠鏡 ( VLBA / NRAO ) で得られた 1156 + 296 というクェーサの波長 18 cm での画像を下図に示します。図1は地上望遠鏡のみのデータ、図2は「はるか」のデータも使った画像です。「はるか」の画像はクェーサからのジェットの構造がはっきり見られます。


図1 地上望遠鏡のみのデータによるクェーサ 1156 + 296 の画像。

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図2 「はるか」のデータも使った同じクェーサの画像。

(村田 泰宏)


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一般公開案内

 今年も宇宙科学研究所一般公開の季節がやってまいりました。本年のPLAINセンターのブースでは、昨年・昨々年と同様、一般公開会場限定版のホームページで、来場者の方々にインターネットを体験していただくことになっております。また、今回は当日の案内板も兼ねて、公開日の各催事ブースの場所・内容の案内をホームページ上で御覧いただけるようになっております。このご案内は用意のととのったブースから逐次、以下のURLに掲載しております。たくさんのかたのご来場をお待ちしております。

ご案内ホームページ
URL: http://www.isas.ac.jp/docs/open97/  

(長木 明成)


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大型計算機に関するお知らせ

I.大型計算機の7・8月の保守作業の予定



 ※1
M:システムメンテナンス         

 ※1
各計算機共事前にイニシエータクローズ処理は行いませんので,作業開始の8時には終る様計画的にジョブの実行をして下さい。尚、GS8400/20 はジョブのセーブホルト処理により保守作業を行います。                              
II.センター計算機利用のための公衆回線数の増強について

 昨年10月4日付のセンターニュースでお知らせして以来半年の間に回線利用数も多くなってきたので、下記の通り2回線増設し、各々を代表番号化しました。一部番号が変更になりますのでご注意ください。(回線番号59−4274の変更作業は、このニュースが配布される7月14日(月)早朝に行います。)利用方法は従来と同様です。                   

電話番号は次の通りです。

(a)UNIX マシン用 NET BLAZER 経由
0427-59-4982(代) MAX. RATE 9.6 Kbps TTY
0427-59-4962
0427-59-4983(代) MAX. RATE 14.4 Kbps TTY
0427-59-4963

(b)GS8400/20 MSP マシン用 使用モデム:F1935TA
0427-59-4985 2400 bps TTY
0427-59-4986 2400 bps BSC

III.計算機システムの運用停止について

 8月10日(日)の9:00〜13:00の間相模原キャンパス全域に於いて電気設備点検のため停電があります。そのため計算機システムも7:00〜15:00の間、運用停止となります。尚 VX/2 、DEC Alpha については8:00頃より電源断の予定ですので、それ迄に計算を終了して下さい。
(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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〒229 神奈川県相模原市由野台 3 -1-1 (Tel 0427-51-3911,内線 2611)