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PLAINセンターニュース第117号 |
田村隆幸 0. はじめに 0. はじめに PLAIN センターでは、2001年度より始まったスーパー SINET 事業(情報学研究所) の宇宙科学・天文学部会のうち宇宙科学研究班の代表として、高速通信の基盤技術の確立とそれを用いた新しい研究手法の開拓・創出を進めてきました。今年度は新たに4つの研究機関が接続される予定で、計13機関が宇宙研とスーパー SINET 専用回線(以下では専用回線と呼びます)で繋がることになります。現時点では、01年度接続組は定常運用中、02年度接続組は、ネットワーク構築あるいは接続試験中、03年度の新機関は導入経費要求中です。専用回線については、このニュースでも報告してきました(PLAINセンターニュース第99号、同ニュース第108号)。 表1に、接続先の機関と主な研究項目をまとめました。今年度以後は、特に以下の課題を中心に取り組んで行く予定です。 表1 スーパーSINET ・宇宙科学研究班の主な利用形態 (計画中も含む)
1. 宇宙研で行われる衛星の開発・試験でのスーパーSINET 専用回線の利用 宇宙研で試験が行われている衛星の中で、特に Astro-F と Astro-E2 の開発・試験に専用回線を活用します。これらの衛星は、これまでのものに比べて大型・複雑化しており、これまでにない大容量のデータを試験中および打ち上げ後に産出します。またその開発・試験はこれまでの計画と同じく、全国の研究機関との協力によって行われています。宇宙研での試験で得られた大容量のデータを即座に各研究機関に送ることで、研究者の宇宙研への出張の必要性が減り、かつ試験データを最大限活用することができます。例えば Astro-E2 衛星の HXD 開発グループでは、毎日の試験で作られる数GBの全データをすぐさま東大、金沢大学、広島大学へ転送し、各大学で詳細なデータ解析をおこなう予定です。これによってマンパワーを効率的に利用することができ、さらに次の試験計画を迅速に立てることができると期待しています。データ転送に加えて、試験の映像をリアルタイムで各大学に中継する計画も提案されています。また Astro-F グループでは、宇宙研・東大・名古屋大学との間で、ほぼ毎日の頻度で衛星開発や観測計画のための専用回線を利用したTV会議をおこなっています。これらの衛星は、打ち上げ後に大量かつ貴重な観測データを取得すると期待されております。これらのデータを全国の各機関で迅速に利用するためにも、できるだけ早く専用回線の利用法を確立しておくことは必要であります。さらに、これらの衛星試験の経験をいかし、Solar-B などの以後に続く衛星計画にも専用回線を利用して頂きたいと思います。 2. 天文台-宇宙研間の科学データベースの結合 これまで宇宙研、天文台ではそれぞれ独立に宇宙科学・天文学のデータベースを構築し、国内外の研究者へ提供してきました。宇宙研/PLAIN センターと天文台/データ解析計算センターが中心となり、専用回線を利用したデータベースの相互結合システムの開発を進めています。 その目的は、国内外のデータベース利用者の利便性を高めることと、両機関の資源(人材、知識、計算機など)を共有し、作業の効率を高めることです。今年度の計画は、(1)太陽観測の波長横断データベースの開発、(2)「多波長天文画像閲覧システム (jMAISON)」の改良、(3) 相互のデータの NFS 接続法の最適化、(4)昨年度に構築したプロキシシステム利用の促進と利用法の確立、および(5)データベースの相互バックアップ法の確立です。 3. 大規模・数値シミュレーション計算資源の高速転送と相互利用 宇宙研の大型計算機で行った大規模シミュレーション計算のデータを、専用回線で高速転送し、詳細な解析を各大学でおこなう。 例えば慶応大学の理工学部機械工学科松尾研究室では燃焼を含む圧縮性流体の大規模数値解析を行っています。この時間発展的な多次元燃焼流体の解析計算で必要となる大量のデータの転送に専用回線を利用する予定です。また、北海道大学、東京大学、九州大学では異なる性質の宇宙プラズマ・地球磁気圏シミュレーション研究を個別に行っています。これらの大容量のシミュレーションデータを、専用回線を利用し、それぞれ共有し、再解析することにより相互補完的な研究体制を確立することを目指しています。 4. 宇宙研の衛星のアーカイブデータの共同作成 おもに以下の衛星のアーカイブデータの転送に専用回線を利用します。
従来、宇宙研以外の研究機関ではこれらのデータ(の一部)を各自転送し、必要に応じて更新、再転送をおこなってきました。また一部のデータは、宇宙研以外の機関で管理されているものもあります。専用回線を利用することによって、転送の時間を節約できるだけではなく、各機関でのデータ管理のコストと手間を削減することができると期待できます。各機関でのデータ転送、管理を省略し、必要な最新のデータを随時、宇宙研などから専用回線で転送する可能性も検討されています。 5. その他の将来計画 以下のような研究手法も計画されています。
6. 最後に この記事は、スーパー SINET・宇宙科学研究班の接続先の研究機関および宇宙研内の担当グループから提出していただいた研究報告、研究計画をもとに書きました。 |
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