PLAINセンターニュース100号
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SELENE 月ミッション運用解析センタについて
その2
飯島 祐一 
惑星大気物理学部門

 先回に引き続きSELENEの月ミッション運用解析センタについて報告します。今回はデータの蓄積、解析について詳しくふれたいと思います。ミッション運用システムは観測機器のクイックルック、運用計画立案という機能以外に、データ解析に必要なデータの集約という機能があります。SELENEではテレコマ運用(S帯)をNASDA新GN局で実施し、ミッションデータの受信(X帯)や小型衛星のドップラ計測は臼田局、軌道決定はTACCで実施するといった運用形態をとります。そのため下流側で必要なデータを集める機能が必要です。テレコマデータや軌道決定値だけでなく重力場解析に必要な追跡データ、局情報などデータも集められます。集められたデータはデータアーカイブシステムで蓄積します。データアーカイブシステムはレベル0サーバとレベル1サーバに分かれています。レベル0サーバは生データの保管を行いますが、10テラバイト相当の容量を準備します。レベル1サーバには観測機器毎にデータを分けて、解析の担当者がアクセス出来るようにします。またこのサーバには解析に必要な情報を軌道データやHKデータから抽出、処理、蓄積する解析データベースを構築します。解析データベースには観測機器で共通に使用する軌道決定値や日照日陰太陽高度、衛星高度などの情報が蓄積され、バージョン管理や観測時間で検索できるなどの機能があります。各機器の解析担当者はレベル1サーバからデータ解析システムであるアプリケーションサーバシステムまたは各研究機関へデータを送って処理を行います。アプリケーションサーバは中核計算機を中心として大量の画像処理や地形図の作成などを行います。

 SELENEミッションの特徴として多種の科学観測を同時に行い、個々の観測から得られた結果を組み合わせることが挙げられます。例えば、レーダサウンダーによる地下構造や地形と、蛍光X線やガンマ線による元素分布との相関を見ることによって月の表層のテクトニクスを解明するなど、搭載観測機器の結果をインテグレーションすることによって高い科学性を得ることを目標にしています。そのためSELENEで得られる元素・鉱物分布、地形、地下構造、重力場、残留磁化などのグローバルマッピングの結果を相互参照できるデータベースをアプリケーションサーバシステムに構築する予定です。このデータベースでは観測地域や観測時間などのパラメータにより相互に検索できるようにします。SELENEではノミナル観測ミッション終了後、1年の後には世界中の研究者に対してデータの公開を行いますが、より多くの研究者が利用しやすいデータベースの構築を目指しています。


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