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太陽観測衛星「ようこう」その3井 上 浩 三 郎![]() 「ようこう」
鮮明に脳裏に残ったSXTのファーストライト「ようこう」の打上げから4日目の1991年9月3日に,搭載した軟X線望遠鏡(SXT)から太陽の初画像が送られてきました。その時のことは,今でもはっきりと思い出すことができます。驚くほど鮮明な画像でした。このSXTを開発・担当した常田佐久先生(現・国立天文台教授)は,ファーストライト(新しい望遠鏡による最初の観測)で取得されたデータからくっきりとした太陽像が浮かび上がったときの感想を,次のように語っています。
科学的成果「ようこう」は多くの科学的成果を挙げましたが,ここではその詳細は述べません。プロジェクトマネージャーを小川原嘉明先生から引き継がれた小杉健郎先生は,その成果を次のように述べています。
さらに「ようこう」は,日米英それぞれの得意な技術を活かした国際協力を行い,インターネットで全世界へデータを配信し,最先端の科学成果を親しみやすい形で社会へ還元しました。
停波により運用を終了「ようこう」は2001年12月15日に南太平洋の上空で金環日食に遭遇したことに端を発し,姿勢制御異常による衛星の回転,衛星電池の充電ができなくなることによる電源消失という事態に陥り,太陽指向姿勢を失った結果,正常な観測ができなくなりました。2年以上にわたり復活を試みましたが,電池充電の条件が整わず,衛星高度も落ちてきたため観測を断念しました。2004年4月23日,このプロジェクトを成功に導かれた「ようこう」衛星の前プロジェクトマネージャー小川原先生の立ち会いのもと,衛星電波停止のコマンドを送信し,運用を終了しました。「ようこう」衛星は総合試験のノイズ問題に始まり,打上げ直前のBCSの電源リレー,バッテリー温度,第1周目に行ったパドル展開時のマイクロスイッチアンサー,長期観測の最後に遭遇した金環日食への突入など,いろいろな問題・出来事がありましたが,それらを一つ一つクリアし,ミッション寿命3年をはるかに超えて,10年3ヶ月という長期にわたる観測で数々の成果を挙げました。これらのことは大きな自信となり,また,この経験は次に続くSOLAR-Bに活かされることと思います。なお,「ようこう」衛星は1991年8月30日打上げ以来,2005年8月30日で14年目を迎えますが,来る9月14日ごろ大気圏に突入し消滅する予定です。
(いのうえ・こうざぶろう) |
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