初めてのノルウェーへ
5月29日(日),始発の電車で成田空港へと向かいました。久しぶりの海外出張,初めての北欧,初めてのノルウェーです。今回はノルウェーのSandefjordで開かれる観測ロケットと気球に関するシンポジウム(17th ESA Symposium on European Rocket Balloon Programmes and Related Research)へ石井先生,阿部先生とともに参加致しました。
成田からSandefjordまでは,アムステルダムを経由して17時間ほど。ビールを飲みながら各座席に取り付けられたモニターで好みの映画を見ては昼寝して,というのを5回ぐらい繰り返して,やっとアムステルダム。Sandefjordに着いたのは夜の9時前ですが,日本人の感覚としては夕方の4時ごろでしょうか。この時期,ノルウェーは白夜とまではいきませんが,暗くなるのは夜11時ごろで,深夜2時ごろにはまた明るくなり始めます。Sandefjordはノルウェー南部のフィヨルドに面した小さな街で,空港から街までの間にはきれいな草原と小さな森が広がっています。失礼な話,北欧ってもっと薄暗くて寒い感じを想像していたのですが,実際この時期は日本のすがすがしい春のようです。
若い学生とチャレンジングな研究を
会議は今回で17回目を迎え,ヨーロッパ各国の観測ロケット・気球に関係する研究者をはじめ,日本,アメリカ,中国など世界中の研究者が集い,各国の活動状況や観測結果,これからの計画や新しい観測ロケットの紹介などが行われました。どのセッションも活発な議論で盛り上がり,私自身,各国でこんなにもいろいろなロケット・気球を用いた観測活動があったのかと,勉強不足を痛感致しました。
印象的だったのは,高校生・大学生くらいの多くの若い学生が参加し,会議の合間には先生らしい人を交えてロビーで議論している姿でした。会議は朝早くから夕方遅くまでびっしりとセッションが詰まっていたのですが,さぼって遊びに行ったりすることもほとんどないようで,興味深そうにプレゼンテーションを聴いていました。日本の学会でも学生さんをたくさん見かけますが,その多くは大学院以上の学生でしょう。おそらくはまだ専門の研究をしたことのない若者たちがこのような学会に参加できることは,話の内容をすべて理解するのは難しくても,将来自分がやりたいことを考える上でとても貴重な体験になるだろうな,と感じました。また,我々が行っている観測ロケットや気球の実験により多くの若い学生・研究者が参加し,チャレンジングな研究を一緒にできたら,とも感じました。近い将来そういったことが,私が携わっている再使用ロケットを使って実現できればと思います。
街を歩いてみると
Sandefjordは歩いて1時間ほどでぐるっと回れるくらいの小さな街で,観光名所もあまりありませんが,会議の合間に「クジラ博物館」に行きました。ノルウェーは捕鯨国で,今でも多くのクジラを捕まえて食用にしており,街のスーパーにもクジラの肉がパック詰めで売られています。博物館ではクジラの全身骨格の展示があり,捕鯨の様子をビデオ上映しています。捕鯨の善し悪しは私自身これまた勉強不足でよく分かりませんが,捕鯨船上で巨大なクジラがあっという間にバラバラにされる光景はちょっと衝撃的でした。おそらく普段食べている牛や豚の解体も,見れば衝撃を受けるでしょうが。たぶんあのビデオは「捕鯨って素晴しい!」っていうのを伝えたいのだと思うのですが,ちょっとそんな気にはなれないくらい生々しい映像でした。巨大なクジラの骨でホテルの入り口が飾られていたり,捕鯨に使うモリが港で何げなくオブジェになっていたりと,とにかくノルウェーの人にとって捕鯨はとても大切なもので,クジラは生活に密着しているようです。
クジラだけではなく漁業に対する思いは日本人に負けないくらい強いようで,怒った顔のおばちゃんが魚やカニが載った台車の前でプンってしている訳の分からない銅像が,これまた何げなく道路脇にあったりなんかします。確かに魚,特にサーモンはとてもおいしいです。そうそう,像といえば,このほかにもいろいろありました。なぜか公園にライオンの像がポツリ,ホテルの脇に角の生えた馬だか犬だかみたいな生き物の像がポツリ,道端にでっかい亀の像がポツリ,至る所にポツリポツリ。どの像にも何一つ説明はありませんが,何か深い意味があるのかもしれません。
まだまだ奥深きノルウェー。また訪れたいので,ぜひ観測ロケットをノルウェーでもう一度。