No.277 |
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ウルトラマンはいますか?神奈川県立座間高等学校 金 子 肇座間高校から車で30分ほどで行ける宇宙科学研究所(当時)を初めて訪問したのは,2002年の6月下旬であった。 的川泰宣先生の研究室に入ると,そこは広くて明るいながら,本や書類などが山積みの雑然とした部屋というのが正直な第一印象であった。……私はいたずら心を起こして,セクレタリーの利岡さんに小声で「ウルトラマンはどこにいますか?」と尋ねてみると,「ハア?」という返事。初対面の方に大変失礼したと今でも思っているが,それを許してくれるフランクさとヒューマニティーをその部屋に感じたからである。
宇宙研との教育連携さて,的川先生をお訪ねしたのは,本校が7〜8年前より取り組んでいる理数教育の充実による高校の特色づくりの柱として,宇宙研との教育連携を依頼するためであった。その年の12月11日には的川先生に本校で1年生を対象として「宇宙・いのち・未来」と題して講演していただき,12月13日には平林久先生に2年生を対象として「私たちのいる この宇宙」と題して講演していただいた。こうして宇宙研との教育連携が始まった。2003年度には文部科学省SPP(サイエンス・パートナーシップ・プログラム)事業(テーマ『宇宙開発最前線』)に採択され,本年度新入生から新たに本校で始まった科目「サイエンスA」の授業の一環として,次の4イベントを実施させていただいた。
(1)6月21日(土) 中澤知洋先生の講演 「宇宙のサイエンスの最前線」
(2)12月6日(土) 竹前俊昭先生の講演
(3)12月12日(金) 澤井秀次郎先生の講演
(4)12月18日(木) 的川泰宣先生の講演 上記(1)は,1年生の後期授業(10月〜3月,1単位)から始まる「サイエンスA」に先だって,受講生募集のための記念講演として実施した。教員側の予想を大きく上回り70名の受講生が集まった。 (2)は,惑星探査機「のぞみ」が火星探査断念かという大変な時期に宇宙研を見学させていただいたため(写真。写真提供は本校の段木先生),生徒たちはいろいろとインパクトを与えられたようであった。生徒の感想を一つ紹介する。 ……ロケットの仕組みについて少し分かった。1回の打上げのために何年もの歳月を費やし,いろいろなテストを繰り返していく……。ホントに大変な作業ばかりだなって思う反面,興味をそそられました。でも,打上げ時に,たった一つの小さなミスがあってもいけないっていうのは,すごいプレッシャーだろうなと思いました。そのミス一つで,今までの努力がパー……。大変だ! それらの作業を行っている人たちはホントすごいなって思いました。なかなか経験できないような体験を今回することができ,本当に良かったなって思いました。 なお,この施設見学には小山孝一郎先生にもご協力いただいた。この誌面を借りて感謝申し上げる。 (3)は,多くの生徒にサイエンスへの興味関心を持ってもらいたいと考え,「サイエンスA」受講生だけでなく,1年生全員(241名)を対象に実施した。 (4)は,日本のロケット開発の歴史から講義していただき,生徒からは「ロケットとか宇宙とかはまったく嫌いなのでいやだと思ったけど,今回の講演で少し興味を持った」や「宇宙に行くということは,つくづく大変なことだと思った。ヒトとチームということが大事!!」などの感想があった。 そして,年が明けた1月15日(月)には,生徒たちによる「サイエンスA・SPP事業についてのプレゼンテーション」が実施され,授業を締めくくった。
心の中に本物のウルトラマンを見たことに期待さて,テレビに出てくるようなウルトラマンは,残念ながら宇宙研にはいなかった。しかし,宇宙研の先生方の講演や施設見学を通して,先生方の宇宙への情熱やサイエンスへの真摯な姿勢に触れたことで,生徒たちは心の中に「本物のウルトラマン」を見たことと期待したい。生徒の興味関心は多様化しており一人ひとり違うが,今後も本校は,JAXA宇宙科学研究本部との教育連携の中で生徒たちにサイエンスへの興味関心を高めることができればと願いつつ,擱筆(かくひつ)することとする。(かねこ・はじめ) |
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