No.241
2001.4


ISASニュース 2001.4 No.241 

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- 日本の宇宙科学の新しい時代へ
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放射率可変素子


 人工衛星の大型化と搭載機器の高密度実装化に伴った内部発熱量の増加とその変動,および惑星探査衛星に見られる外部熱環境の大きな変化に応じて,自動的に宇宙空間への放熱量を調整することができる熱制御材料の開発が望まれています。そのような要求に答えるための新しい熱制御材料として,CMR Mn酸化物を活用した放射率可変素子(SRD:Smart Radiation Device)の開発をNECと協同で進めています。本素子は写真に見られる様に,単純なタイル状のセラミックスで,それ自身の温度により表面の放射率が物性的に変わることが特徴です。つまり,グラフに示しますように,SRDの温度が高くなると,放射率も大きくなり,宇宙空間への排熱が促進され機器の温度上昇を防ぐことができます。逆に,SRDの温度が低くなると,放射率も小さくなり,宇宙空間へ逃げる熱が抑制され,機器の温度低下を防ぐことができます。放射率の変化量は低温時と高温時で約0.4程度あります。

 本素子には次のような利点が挙げられます。

・機械的要素,電気的要素を持たない単純構造であるため,動作信頼性が高いこと。
・放射率変化に寄与しない構造部分が無いため,放熱面積を最大限に確保できること。
・薄いセラミックスのタイルであるため,軽量であること。
・材料が特殊でなく,かつ,製作が容易であるため,低コストであること。

 我々は放射率可変素子のさらなる機能性向上をねらって,放射率の改善,軽量化,フレキシブル化を目指しています。また,SRDは小惑星探査衛星「MUSES-C」や小型工学実験衛星「INDEX」等に搭載され,宇宙環境での実証試験を行うことを予定しています。

(大西 晃,太刀川純孝(宇宙研),島崎一紀(慶大),中村靖之,岡本 章(NEC)) 



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