No.241
2001.4


ISASニュース 2001.4 No.241 

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SPS技術研究のための工学衛星計画


 近年,エネルギー問題は化石燃料の枯渇という面からだけではなく,化石燃料消費に伴う二酸化炭素排出量の増加による地球温暖化により環境問題の面からも深刻に受け止められている。巨大な太陽電池パドルを有する発電衛星を衛星軌道上に打ち上げ,発電した電力をマイクロ波で地上に送電する太陽発電衛星(SPS)システムはクリーンで安全な代替エネルギーシステムとして30年以上にわたり各国で検討されてきた。特に,宇宙科学研究所を中心にまとめられた太陽発電衛星SPS2000は多くの概念設計の中でも実現性の高さは内外から評価されてきた。

 このシステムは西暦2000年着工を目指した10MW(メガワット)クラスの発電衛星であるが,現実には未だその端緒にも届かず,また,予備段階として提案されている先行すべきプロジェクトさえも未着手の現状にある。先行プロジェクトとしては大型宇宙構造物や宇宙からの大電力無線送電技術に関する技術実証が提案されているが,前者に関しては国際宇宙ステーションの建設等必ずしもSPS固有の技術ではない。しかし,後者は他のミッションとは大きく異なり,SPS実現に向けて最初にクリアーされるべき重要な課題である。また,工学衛星によって実証することで,世論へのデモンストレーション効果も少なくないと考えられる。

 無線送電に関する宇宙実験としては,1983年MINIXロケット実験,1993年ISY-METSロケット実験が行われ,電離層中のマイクロ波伝播に関する基礎データが得られている。次の研究開発ステップは,試験衛星による軌道上から地上への正確な長距離エネルギーの伝送技術の確立である。

 我々は,この無線送電を中心とした先行プロジェクトとしての衛星計画を検討しており,その概要をまとめた。特に検討に際して前提条件として,5年程度で実施可能であり,大型ロケット一機で実現可能な計画とした。

(田中孝治,成尾芳博,佐々木進(宇宙研)) 


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