No.241
2001.4


ISASニュース 2001.4 No.241 

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- 日本の宇宙科学の新しい時代へ
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宇宙天気のためのL5ミッション


 太陽面爆発やそれに起因する磁気圏,電離圏擾乱により,衛星の機能障害や電波伝搬異常が発生することはよく知られているが,太陽面爆発に伴う擾乱の伝搬機構や高エネルギー粒子の加速機構など,そのメカニズムの多くは未解明である。国際宇宙ステーション(ISS)など人類の宇宙における活動の拡大ともあいまって,宇宙環境擾乱現象の理解とこれらを予報する事を究極の目的とした「宇宙天気研究」に各国が本格的に取り組みつつある。NASAでは昨年秋から,宇宙天気予報を目的とし,多数のの宇宙機を地球磁気圏や内部太陽圏に展開する“Living with a Star”プログラムをスタートさせた。


太陽 - 地球系が作る5つのラグランジュ点。

 我々は,太陽地球間を一望できる点,たとえば太陽,地球と正三角形をなすL5点にリモートセンシングとその場計測の観測装置を搭載した観測機を展開し,太陽地球間空間を伝搬する惑星間プラズマ雲の観測などを実施するL5ミッションを提案し,研究を進めている。プラズマ雲の伝搬過程の「横から」の観測とともに,地球近傍等の探査機との同時連続観測により,極大期の太陽面及び太陽地球間空間の擾乱を立体的に観測し,
「大規模なコロナ構造の変化の観測によるフレア/CME発生機構の解明」,
「コロナ中及び惑星間空間における衝撃波の振る舞いと粒子加速の解明」,
「地球全体を検出器とした太陽風・磁気圏相互作用の観測」,
「宇宙天気予報のための機上データ解析・警報実験」
等を実施したいと考えている。

 惑星間空間を伝搬するプラズマ雲は,1AU(天文単位)程度において,その背景光である黄道光の100分の1程度の輝度しかなく,通常の広視野カメラでは十分なS/N比で検出することが困難である。このため,散乱光を十分に低減するとともに,モザイク化も含めた大フォーマット冷却CCDを用いて検出限界をあげる必要がある(画素の足しあわせと画像積算)。また,1AUの遠方から,科学目的を満たす高時間・空間分解能のデータ伝送を実現する事は困難である。このためイベント検出やその重要度の判断指標を抽出し,科学的重要度の高いイベントに限ってデータを地球局に伝送する高機能テレメトリーの開発なども,ミッションフィージビリティを確立するために先行的に実施している。

 通信総合研究所では,宇宙天気予報の研究を従来より拡大した体制で推進していく事としている(独立行政法人中期計画等)。その中心的な観測プロジェクトとして,宇宙研や宇宙開発事業団,大学等と連携して2008年頃の実現を目標に研究を進めたい

(秋岡眞樹(通信総研)) 


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小型低コストのM-V-Liteと,
それによる理工学ミッション
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