No.241
2001.4


ISASニュース 2001.4 No.241 

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黄道面脱出ミッション


 黄道面とは太陽を周回する地球の軌道面の事を言い,他の惑星もほぼ黄道面内を周回している。黄道面脱出ミッションとは探査機の軌道面が黄道面内から外れるミッションの事をいう。今までに行われた黄道面脱出ミッションは太陽物理学・惑星間空間物理学に非常に重要な結果をもたらしたNASAの探査機Ulyssesのみである。さて,黄道面脱出して探査することの最大のメリットは以下のつに集約される。

 A)太陽・太陽系内空間の次元的観測が可能。
 B)黄道ダストから逃れた観測・計測が可能。

 これらの利点から,黄道面脱出ミッションを望んでいる科学分野は太陽物理学・惑星科学・惑星間空間物理学・赤外線天文学と多岐に渡り,下記に例を挙げるような項目ができると考えられている。

 1)可視〜中間赤外線域宇宙背景放射の観測
 2)銀河内塵の観測・褐色矮星の検出
 3)星間起源塵組成分析
 4)星間空間粒子物理量の測定
 5)カイパーベルト起源塵の総量測定
 6)惑星間塵の空間構造・組成分布の解明
 7)宇宙線異常成分の機構の解明
 8)太陽磁場等による粒子加速機能の解明
 9)太陽風3次元構造・発生メカニズムの解明
 10)太陽活動領域・CMEの3次元的構造解析
 11)太陽極域の内部構造・表層領域構造の解明

 探査機が黄道面を脱出するには非常にエネルギーが要り,現在ある推進系では地球からダイレクトに黄道面を脱出する軌道に入れることはできない。その為現在のところ探査機が黄道面を脱出する軌道に入るには,金星・地球複数回フライバイをして徐々に軌道傾斜角を立てていく方法か,木星まで行き1回のフライバイで軌道傾斜角を立てる方法かののどちらかしかない。このように探査機軌道が地球軌道を離れる為に,このミッションは宇宙望遠鏡というよりは惑星探査機の色合いが濃い。しかし,上記でも挙げたが,本来は宇宙望遠鏡で行ってきた太陽観測や赤外線観測もこのミッションで行うことを考えられている。よって,黄道面脱出ミッションは惑星探査機と宇宙望遠鏡の両方の側面を併せ持つ従来の科学衛星の枠から離れた非常にユニークなミッションである。

(長谷川直(宇宙研),他,黄道面脱出ミッション検討グループ) 


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