No.241
2001.4


ISASニュース 2001.4 No.241 

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- 日本の宇宙科学の新しい時代へ
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しし座流星群観測衛星


 しし座流星群の活動は最近のMcNaught-Asherモデルによって,かなり正確に予想することが可能となってきている。同モデルによると,2001年2002年1時間あたり1万個オーダーという非常に活発なピークが予測されている。また,近年実施されたNASAの航空機による観測(Leonid MAC)などの結果,きわめて大きな相対突入速度をもつしし群の流星は,高度150〜200kmという通常では大気圏外と思われる高度から発光をはじめていること,またこのような高高度では昇華温度の低い物質,たとえば有機物系の物質が発光に関与していることが指摘されている。これらの高高度発光物質をとらえるためには紫外域での分光が必要であるが,しかしながら大気による吸収のため,地上からの観測には限界がある。従って,衛星を使って大気圏外から流星群を観測することの科学的意義は大きい。

 しし座流星群観測衛星は,1999年の衛星設計コンテストにおいて東北大学の学生たちによって提案されアイディア大賞に輝いた。学生より斬新なアイディアを募りそれを日本の宇宙開発につなげていく,というコンテストの主旨にのっとりまた期待される成果も大きいことから,われわれはこのミッションを実現すべく全力をあげている。観測できる時期が限定されており残されている日数も少ないことから,小型衛星の開発に実績のある企業を,またタイムリーな打ち上げ機会を世界中に求め,開発をすすめている。なお,分光器等のサイエンスペイロードについては国内開発の予定である。更に衛星との通信については,アマチュア無線衛星からも多くのことを学び,しかしIT時代を先取りするインターネット通信方式を使った通信実験も予定している。たとえば,流星ピーク時には衛星からのLive Cast(生中継)をインターネットで配信する可能性も検討中である。本ミッションはNASDAミッションでも宇宙研ミッションでもないところで,新たな可能性にチャレンジするミッションである。その成果は宇宙科学,宇宙工学のみならず,人材育成という点でも今後の日本の宇宙開発に大きく寄与するものと確信している。

(吉田和哉(東北大工),矢野創(宇宙研),海老塚昇(理研),大野浩之(通総研)) 


軌道上からみた流星群の想像図。流星は放射状に広がるのではなく,1点に収束するように見える。


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口径10m遠赤外線サブミリ波望遠鏡
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