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「はるか」観測開始!!

 今年2月に打ち上げられた「はるか」は2月28日に8mアンテナの展開も無事に終わり,3月11日には臼田10mアンテナでの位相伝送試験にも成功しました。その後3月24日には天体の信号を初受信しました。天体はW49Nという天体でOHメーザというOH分子の出す強い輝線スペクトルが用いられました。当日は「はるか」チームの面々が集まり固唾を呑んで,分光器からのデータを見守りました。衛星内のスプリアス信号よりも弱いレベルでしたが1665MHzと1667MHzの2本の信号が確実に捕らえられ,「はるか」のファーストフライトは通りました。その後はいよいよ干渉としてのVLBI実験です。4月2日以降は日陰軌道に入るために、それまでメーザ源W49N,SgrB2さらに1334-127という連続波電波源を用いてVLBI実験を行いました。残念ながらデータの磁気記録系にトラブルが発生し失敗しましたが,日陰軌道明けの5月7日満を持しての再観測でフリンジ(干渉縞)を「はるか」・臼田64mアンテナで検出することが出来ました(図参照,天体は1519-273)。これはすでにもっとも長い基線でのフリンジであり,世界でもっとも高い空間分解能を有する観測装置として「はるか」が動き出したことを意味します。
 深宇宙ネットワークなどの海外追跡局では現時点でまだフリンジが出ておらず,正直に言えば臼田ももう少し手こずると思っていました。これも1次噛み合わせ・総合試験さらに3度にわたる地上系総合試験と万全を期した「はるか」チーム全体のがんばりの成果であると思っています。

(小林秀行)


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M-25SIM-1真空スピン燃焼試験

 M-Vロケットの1号機の成功からまだ3ヵ月半ほどしか経っていませんが,2000年を越えたあたりから性能をさらに改善するため,M-Vロケットの改良計画が既に始められています。今回の地上燃焼試験はこの改良計画の第一陣として行われたもので,現在のM-Vの2段目(M-24)にさらに新技術を投入して性能を向上させるための基礎データを収集することが目的です。これらの新技術とは従来上段の高性能モータに採用されてきた炭素繊維強化プラスティック製(FW)モータケースと,この採用によってモータの燃焼圧を高圧化しノズルやスロートなどの構成要素の小型軽量化を図ることなどで,今回の試験ではこのM-25モータの約1/5のスケールの小型モータを試作し,これらの新技術の性能を確認するため,FWモータケース,高圧燃焼下における推進薬の燃焼特性,ノズルスロートに新たに採用する計画の3次元C/C複合材の耐熱や損耗特性などについて,実機サイズのモータ設計に必要なデータの蓄積を行うことが計画されました。試験は能代実験場真空テストスタンドで5月30日午前10時点火により行われました。
 燃焼試験の結果は良好ですべての計測データが得られました。速報によると概ね設計通りの燃焼特性が得られ,モータケースの強度やノズルスロートの損耗状況などもほぼ計画通りで,今後のM-Vの改良計画の進展にはずみをつけることと思います。

(稲谷芳文)

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第16回宇宙科学講演と映画の会

 4月12日(土)千駄ヶ谷,津田ホールにおいて第16回宇宙科学講演と映画の会が行われました。約450人来場し,西田所長の挨拶,そしてX線で見る宇宙(井上一教授),電波天文衛星の誕生(廣澤春任教授)の講演があり,質問の時間帯では,二人の講師に西田所長にも加わっていただき的川先生の巧みな進行で質疑応答に入ったが,質問の中でいつもトップを占めるのがブラックホール・宇宙人・宇宙の果てと宇宙の始まりである。この中で一番質問してほしくないのは後者の二つであるとの出だしで始まり,そこで観客からその意味を理解したのか爆笑。宇宙のひも理論についての質問は回答者を苦笑いさせた。今回はかなりのマニアックな質問が多かったと思う。その中で一番面白かったのは「宇宙研内の男女比率はどれくらいか」という質問。それに対して所長が回答した。的川先生がそこでフォローした言葉「全く男女の差別はありません」。またまた会場から笑い声が…。幅広い活発な質問の後,引き続き映画「私たちの太陽系」が上映されました。アンケートの中で所長自ら舞台へ上がった宇宙研の姿勢が良いとのこと。井上先生の話を聞き宇宙が身近に感じられ,廣澤先生の「はるか」に注がれた思いに感動などなどいろいろな思いを胸にし,この会を続けて下さいとの声があり無事終了いたしました。

(渡邊遊喜枝)

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火星探査機PLANET-B噛合せ試験

 PLANET-Bのフライトモデルの1次噛合せ試験が,3月24日より,宇宙研の飛翔体環境試験棟で行われている。PLANET-Bは,来年夏期にM-Vを用いて打上げが予定されている火星上層大気の科学観測を主なミッションとする探査機である。我が国初の惑星探査をめざして,多くの新しい技術を盛り込んで開発が進められてきたものである。高機能化を図りつつ,特に軽量化には,力を入れ,先端的な技術に支えられて,重量を抑えた設計となっている。NASAが,1992年に打上げた火星探査機 Mars Surveyor (火星軌道投入に失敗)が約2.2ォ Global Surveyor が約1.1トン,それに対して,我がPLANET-Bは約540kgと軽量級。しかし,科学観測のために,実に14の機器を搭載し,世界第一級の科学をねらっている。
 写真は,直径1.6mの高利得アンテナを搭載したPLANET-Bを上から見たものである。CFRPを素材として3軸織りという技術でメッシュ状に作ったアンテナは,言わばシースルールックで,下に,10面体の探査機本体が透けて見える。搭載機器を取り付ける前の構体である。
 3月下旬より,サブシステムを次々に組込んで,5月下旬から6月上旬に全体を組上げての試験に入る。外国からは,カナダ,ドイツ,スウェーデン,アメリカ,フランスなどの機器や部品が組込まれ,試験は英語と日本語の混ざる賑やかな進行となっている。今回の試験終了は6月下旬を予定している。

(中谷一郎)

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LUNAR-A打ち上げ延期

 今年夏にM-Vロケットの2号機で打ち上げる予定だった月探査機LUNAR-Aは,月周回軌道上で母船からペネトレータを切り離すための機構の剛性に問題点があり,来年度の冬期以降に延期されました。母船とペネトレータそれぞれの単体としてのテストは無事終了していましたが,このたび母船と3機のペネトレータを結合しての振動試験が行われた際に,分離機構に剛性不足が認められたものです。剛性の弱い部分を改良して再び総合試験を開始するには約1年の期間が必要と見られていますが,その時期には来年7月に打上げ予定の日本初の火星探査機PLANET-Bの総合試験があります。周知のように火星探査機の打上げチャンスは2年に1度しか巡ってこないので,PLANET-Bのスケジュールを優先せざるを得ず,LUNAR-Aはその後になります。

(的川泰宣)

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