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M−Vロケット8号機搭載のサブぺイロード実験2月22日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたM−Vロケット8号機のサブぺイロードには、ソーラーセイル膜面展開実験ペイロード「SSP」と、東京工業大学の超小型衛星「Cute-1.7+APD」が搭載されました。それぞれの結果について、ご報告します。
ソーラーセイル膜面展開実験SSPSSP(Solar-sail Sub Payload)は、直径10m超級の扇子型セイルの展開制御(セイルをゆっくり展開する)を目的とするサブペイロード実験モジュールです。独自のテレメータを持ち、実験データ(カメラ画像、モーター回転数、Cuteステータス)の受信をオーストラリア上空(実験中)およびアラスカ上空(実験後)で行いました。しかし、受信時にトラブルがあり、受信データの質が非常に悪くなってしまいました。結局、実験中の画像は再生できず、実験後の画像が何とか数枚再生できたという状況です。取得できた画像のうち2枚を図1、2に示します。図1はSSPを第3段計器部下部から見上げた画像で、セイルの一部が展開していることが確認できます。また、図2は衛星接手越しにセイルが展開してくるはずの位置を見ている画像ですが、残念ながらセイルは見えていません(左手に写っているのは地球)。これらの画像と、実験中のモーター回転数のデータなどから、セイルは途中までは展開したものの、何らかの原因で停止したと考えています。詳細については、現在も解析を続けています。
不本意ながら非常に残念な実験結果となってしまいましたが、サブペイロードSSPとしては無事に実験実施までこぎ着けることができました。ここに誌面をお借りして、ご協力いただいた皆さまにお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
(サブペイロードSSP班 竹内 伸介) 東工大サブペイロードCute-1.7+APD
東工大サブペイロードは、東工大松永研究室によって開発された2番目の超小型衛星であるCute-1.7+APD(図3)と分離機構システム(図4)から成り、軌道上運用に成功しました。本衛星は10cmx10cmx20cmの小容積、質量3.6kg(軌道寿命延長のため、2003年に打ち上げられた1機目のCUTE-Iより重量化)と小粒ではあるが、工学ミッションに加え、理学ミッションとして基礎物理学専攻河合研究室の超小型高性能APD(Avalanche Photo Diode)センサを搭載するなど、高集積多機能を実現しました。 Cute-1.7+APDは、日本上空を朝5時ごろと夕方5時ごろに、毎日それぞれ2回程度通過します。アマチュア無線の混信が大変ひどい中で運用を行っており、何回かの危機を乗り越えましたが、現在、受信用制御機器に不具合が生じ、復旧を試みている状態です。しかし今までに、APDセンサの粒子カウントのための基本機能や、2台の携帯情報端末(PDA)、USB入出力などの基本バス機器の機能を確認でき、貴重な軌道上データを継続して取得しています。 大学の一研究室が設計思想のまったく異なる超小型衛星を2機開発し、独自の地上局によって同時運用するという成果に対して、アマチュア衛星通信協会AMSATからオスカーの称号と連番が2機の衛星に付与され、両衛星は歴代のアマチュア衛星の仲間入りを果たしました。
CUBESAT-OSCAR-55(CO-55):CUTE-I 執筆時点で、世界中のアマチュア無線家94局以上から、延べ750回以上の受信報告を受けています。 超小型衛星は、宇宙工学の実践的教育、先端科学技術の早期軌道上実証、新しい宇宙ビジネス手段として期待されており、松永研究室では今後とも研究開発を進めます。サブペイロードという大変有意義な機会を提案・実現・提供いただき、誠にありがとうございました。今後ともこのような機会を継続されることをお願い申し上げます。
(東京工業大学 松永 三郎)
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