がか座β星は,星の周りに塵とガスから成る円盤を持つ,とても有名な天体です。このような円盤の中で,塵が集まって微惑星となり,微惑星が衝突・合体を繰り返しながら惑星が誕生すると考えられています。中間赤外線を使うと,円盤をつくっている塵を観測することができます。COMICSを開発しているときから,がか座β星を狙っていました。しかし,なかなか観測する機会に恵まれず,ようやく念願がかなったときは天気が悪い。ちょっと悲しかったですね。
ところが,岡本美子研究員が観測データの解析を進めていくうちに面白そうな結果が出始めた。円盤が放つ中間赤外線をCOMICSで分光観測すると,塵の大きさと種類が分かります。その結果,微惑星がリング状に分布していることが明らかになってきたのです。「これはNature級の発見だ」と分かるまでに2ヶ月かかりました。 詳細は,「宇宙の○人」や宇宙研のホームページの宇宙ニュースをぜひご覧ください。
ASTRO-Fの次に計画されているSPICAは,3.5mの大口径です。すばる望遠鏡では観測できないような暗い天体も見えてくるでしょう。星の周りの円盤は塵とガスから成りますが,今観測できているのは塵だけです。大口径,そして宇宙で観測するSPICAは,ガスが放つ赤外線も詳しく観測できますから,円盤の全体像に迫ることができるようになります。
日本でも,地上に口径30mの望遠鏡をつくるという計画があります。SPICA級の衛星を複数打ち上げて干渉計にしよう,もっと大口径の望遠鏡を打ち上げようという構想もあります。でも,お金をかけて力づくで大きくしただけでは面白くない。新しいアイデアや方法を持ち込んで,今までできなかったことができるようにならないと,進歩ではありません。しかも,それを自分でやりたい。自分でいろいろ工夫して観測装置をつくり,今までほかの人が見ることができなかった新しいものを見たいですね。