- Home page
- No.259 目次
- 研究紹介
- お知らせ
+ ISAS事情
- 科学観測気球大空へ
- 東奔西走
- 科学衛星秘話
- いも焼酎
- 編集後記

- BackNumber
MUSES-C 打ち上げ延期

 MUSES-Cは今年末の打ち上げに向け,総合試験を実施してきましたが,残念ながら2003年5月のバックアップ・ウィンドーに打ち上げを延期しなければならなくなりました。発端は2002年4月下旬,探査機の軌道・姿勢制御用推進系(RCS)の気密試験中に押しガスの圧力を調整する調圧弁(米国からの輸入品)からリークを生じたことでした。調査の結果,原因は気密保持用Oリングのサイズに問題があり,これが切れたためと判明しました。直ちに正規のOリングに交換したことで一件落着,これだけならスケジュールに影響を与えずに済んだのですが,念のために切れた0リングの材質を調べたところ,仕様とは違う材質のゴムが使われていることが判りました。MUSES-Cの調圧弁には他にも多くのOリングが使われており,もしそれらの材質が仕様と異なると,燃料・酸化剤の蒸気への耐性に問題が生じます。RCSは溶接構造のため,調圧弁を取り外して調査することが出来ません。そこで,ガスクロマトグラフィ応用の非破壊検査を実施するなどにより確認作業を行いましたが,最終判断としてOKが出るまで数ヵ月を要し,2002年末の打ち上げには間に合わない結果となりました。文科省宇宙開発利用課の御尽力もあって5月打ち上げに対する漁連の協力も得られることとなったため,9月26日開催の宇宙開発委員会にその旨の報告をしました。なお,打ち上げは半年遅れますが,小惑星への到着及び地球への帰還時期は変更ありません。

(上杉邦憲) 


Return
Next

- Home page
- No.259 目次
- 研究紹介
- お知らせ
+ ISAS事情
- 科学観測気球大空へ
- 東奔西走
- 科学衛星秘話
- いも焼酎
- 編集後記

- BackNumber
ATREX-13エンジンシステム地上燃焼試験について

 現在(9月11日〜10月1日),能代ロケット実験場において,ATREXエンジンの地上燃焼試験を行っているところです。本試験では,エンジンの主要要素であるプリクーラの着霜問題に対して,エンジン内にメタノールを噴霧することによって解決することを主目的としています。プリクーラは,液体水素燃料の極低温冷媒としての能力を活かしたシステムで,ターボジェットの飛行速度限界をマッハ数までに拡大する上,エンジンの推力,比推力を増加することができます。本試験では,メタノールを均一に噴射するためにノズルを改良し,さらに取り込む空気中の水蒸気量の変化に追従した噴射量の制御を行います。9月17日に実施した1回目の試験(冷走試験)では,故障したターボファンを修理した後の初めての試験ということでしたが,予定のデータを取得することができ,実験班全員,一安心しています。この後,残りの4回の燃焼試験によって当初の目的を達成すれば,プリクーラ,およびATREXエンジンの実用化に向けて,大きな一歩となります。また,今回の試験で,13年間62回に亘って行ってきたATREXエンジンの地上でのシステム実証試験に目処がつきますので,今後は飛行試験に向けた新型エンジンの開発へと進んで行く予定です。実験関係者ならびに協力していただいた方々に感謝いたします。

(佐藤哲也) 


ATREXエンジン地上燃焼試験

Return
Next


- Home page
- No.259 目次
- 研究紹介
- お知らせ
+ ISAS事情
- 科学観測気球大空へ
- 東奔西走
- 科学衛星秘話
- いも焼酎
- 編集後記

- BackNumber
2002年度第2次大気球実験報告

 2002年度第2次大気球実験は,2002年8月27日から9月13日まで三陸大気球観測所において実施されました。放球した気球はBT5型2機B5型1機B80型1機の計4機でした。

 B80-8号機は,クライオジェニックサンプリング法を用いて希薄な成層圏大気を大量に採集することを目的としており,高度15kmから34.5kmまでのほぼ等間隔の11点で,それぞれ大気圧換算で約20リッターの試料大気を採集することに成功しました。これらの大気試料は関係する大学や研究機関に送られ,さまざまな微量成分の濃度や同位体の測定が行われる予定です。このようにして得られたデータは,地球温暖化などの大気環境問題の解決に寄与するとともに,成層圏における大気循環や光化学反応過程の解明に役立つと期待されています。

 BT5-23号機は,光学オゾンゾンデを用いて成層圏オゾンの高度分布の観測を目的として行われました。本年度は,これまでの観測器よりデータ転送速度を向上させることでより高度分解能を向上させ,更にGPS受信により位置,高度,風速等を高精度に測定する機能を付加した新型の観測器を開発しました。今回の観測では,新型観測器の性能確認も含め,従来の観測器との2機同時観測を行い,高度39kmまでのオゾン濃度高度分布の観測に成功しました。


大気球オペレーション風景

 B5-138号機は,気球高度を一定に保つためのオートレベルコントロールの飛翔性能試験を目的として行われました。本システムは,本年度計画されている南極周回気球に搭載され,20日から1ヵ月の飛翔コントローラとして使用される予定になっているものです。飛翔中,排気弁の操作により数回に渡り疑似日没状態を模擬し,本システムが正常に動作することを確認するとともに,本当の日没に対しても正常に動作することを検証することができました。

 BT5-21号機は,対流圏・成層圏の微量成分である二酸化窒素およびオゾンの高度分布の観測を目的として行われました。観測は気球が水平飛行を始めた直後にゴンドラの方位を太陽方向に制御し,その後観測器の上下角の追尾を行って,太陽を捕捉しながら上空日没まで太陽紫外線のスペクトルを取得しました。今後小型・軽量化を行う事により,定常的な二酸化窒素およびその他の微量成分の観測に使用できることが期待されます。

 この実験をもって,2002年度大気球実験はすべて終了しました。ご協力頂いた関係各位に深く感謝致します。

(山上 隆正) 


Return
Next

- Home page
- No.259 目次
- 研究紹介
- お知らせ
+ ISAS事情
- 科学観測気球大空へ
- 東奔西走
- 科学衛星秘話
- いも焼酎
- 編集後記

- BackNumber
「宇宙の日」ふれあいフェスティバル2002

 1992年の国際宇宙年を機会に,一般の人たちに宇宙開発に対する理解を深めてもらおうと設けられた9月12日の「宇宙の日」関連行事も今年で10回目となりました。今年は文部科学省,宇宙科学研究所,国立天文台,航空宇宙技術研究所,宇宙開発事業団,日本科学未来館,日本宇宙フォーラム,日本宇宙少年団の主催で9月15日(日)から17日(火)3日間,松江市の松江テルサを会場に,「おもしろそう宇宙」をテーマに「宇宙の日」ふれあいフェスティバルとして行われました。

 子どもたちに「宇宙」を楽しんでもらおうと各団体がさまざまな企画を持ちより,地球儀のペーパークラフトや星座早見盤を作ったり,紙飛行機やスカイスクリューを作って飛ばしたり,アルコールを燃料にしたプチロケットの意外に大きな発射音にびっくりしたり,宇宙服を着た写真を缶バッジにしたりと,会場は連日家族連れでおおにぎわい。

 宇宙研が用意した「ようこう」の太陽画像はおよそ300枚が出力され,9種類合わせて2000枚用意したペーパークラフトもほぼ無くなってしまいました。大人に大人気だったのが三浦折りで,スタッフの方たちがすっかりはまって何枚も挑戦していました。

 7階ドームシアターでは主催者の講演や科学未来館ライブ中継,アマチュア音楽家の弦楽四重奏,別会場のくにびきメッセでは,宇宙飛行士の古川 聡さんが出演する「スペーストークショー」も開かれました。

 初めての試みで不安も有りましたが,3日間の来場者数約3,000人は大満足の結果でした。

(周東 三和子) 


会場風景

Return
Next


- Home page
- No.259 目次
- 研究紹介
- お知らせ
+ ISAS事情
- 科学観測気球大空へ
- 東奔西走
- 科学衛星秘話
- いも焼酎
- 編集後記

- BackNumber
IACGモスクワ

 前回のロシア当番のIACGで来たのがつい最近のような気がしていたが,5年ぶりのモスクワである。アッと云う間の5年だが,そのアッと云う間に色んな事が起きたものである。

 オリンピック競技場脇のホテルルネッサンスは,記憶は甚だ断片的だが,前回泊まったような気がする。ホテルで呉れた地図の裏面には,「Moscow is no more dangerous than Paris or New York. Many world travelers will agree that Moscow is actually a good bit safer.」とあり,但し街中で現金やクレジットカードなどを見せるなとのこと。誰がそんなことをするものか。ご承知のように道幅は広く,横断歩道は少ない。勢い地下道ということになるが(繁華街でのことではあろうが)そこが危ないとなると,上で車に轢かれるか下で盗られるかというあまり嬉しくない選択になる。実際は,ホテルに頼んであった空港への車の手配も遺漏なく,日本なら12月 に近い冷気も爽やかで,気分良く帰ってきた。

 到着早々,NASAESAISAS主催のパーティー,特記事項なし。

 翌初日は,各WGの報告で参加者はIKIからの傍聴者も入れて比較的多数。Search for Extra Terrestrial Planet WGの報告では,これまでのNASAESAに加えてこの計画へのISASの関心が特に言及され,当方からも席上その旨確認しておく。

 夕刻からはRosavia Kosmos (ロシア航空宇宙局)招待によるモスクワ運河のボートツアー。出発点の Pierには10隻を越える巨船が繋留されており,カスピ海,バルティック海へ2週間の船旅との事であった。我々の船はそれ程大きなものではなかったが,船尾で焼くシャシーリクの匂いが漂う中,サロンの暖炉には薪がくべられ,別の部屋ではカルテットでラフマニノフ,途中接岸して機関名を冠したモデルロケットを4本打ち上げるなど結構な趣向で,恐れ入りました。両岸の風景も印象的で,我々は,平らなところに人が住んでいないと,それだけでこれまた恐れ入ってしまうところがある。

 2日目は,各機関3名ずつによるいわゆる首脳会議。まずWG報告では,IACGはそれまでの各機関の既存計画の調整あるいは協調運用に代えて,長期戦略の策定に沖縄会議で舵を切ったが,その線に沿っての2WG(ILWS: International Living with Star, Search for Extra Terrestrial Planet)の活動は評価が高く,追跡,データ取得を扱うWGと合わせて継続と云うことになった。

 各国の現状報告ではNASAの予算増は目ざましく,ESAは予算不足に対応するための新しい衛星製作アプローチ等を,ISAS機関統合の現況を話した。ロシアは,通信と測位についてはどうにか情勢が安定したので,次なる目標は地球観測と宇宙科学であるが,なお努力を要するとの報告であった。ロシアの具体的な打上げスケジュールがなかなか示されなかった中で,Radio Astron(我が“はるか”の提案時からの好敵手として我々にもなじみ深い電波天文衛星)が,2006年に打上げるべく関係者の調印が済んだばかりということで,あるいは回復の兆しなのかも知れない。

 その他,現在のGeneral SecretaryであるVittorio Mannoの後任については,あと一年間は何とか彼に頼み,その間に基本的にはESAが責任を持って推薦することとなった。

 また,現在の年1回の開催については最低限3年1回とし後は求めに応じて適宜開催することとした。次回は機関統合後の日本で,第一候補は2003年11月,最終決定は来年5〜6月に行う。

 別れ際に,ESA2番手Cavalloが“Did I well behave this time”ときたので“Relatively”と答えておいた。彼は日本に(と云うよりは日本に関する知識を集めることに)興味があって,我々を悩ませる。乾杯の時はそれぞれ勝手に自国語を使い,彼はイタリア人なので“cincin”で一向に構わないのだが,私の方を向いて片仮名で発音したことは間違いない。

(松尾 弘毅) 

Return


#
目次
#
科学観測気球大空へ
#
Home page

ISASニュース No.259 (無断転載不可)