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用語解説
バラスト
2000年度第1次大気球実験報告

 2000年度第1次大気球実験は,2000年5月22日から6月9日まで三陸大気球観測所において実施されました。放球した気球はBT5型1機B30型1機B50型1機およびB150型1機の計4機でした。

 B150-5号機は,エマルションチャンバーによる高エネルギー一次電子を観測することを目的に5月31日に放球されましたが,放球直後に気球頭部に取り付けてある排気弁が不具合をおこし,三陸大気球観測所北東約3kmの山中に着地しました。観測器は6月5日にヘリコプターにより完全な形で回収されました。

B30-68号機は,気球を一定高度に長時間浮遊させるためのオートレベルコントローラの飛翔性能試験を目的に6月3日に放球されました。本実験で,気球が水平浮遊状態に入ったことをコントローラが認識し,バラスト投下高度を正しく設定でき,疑似日没状態で正しくバラストを投下できることが確認できました。

 B50-46号機は,15〜25kmの高度で大気ガンマ線スペクトルを観測することで,ニュートリノ振動について確実な議論ができるようにすることを目的として6月5日に放球されました。15182125kmの各高度で30分から1時間の水平浮遊状態を実現することができ,数GeVから数10GeVに渡るエネルギー領域での大気ガンマ線のスペクトルが5〜10%の精度で観測することができました。

 BT5-19号機は,日本で開発した超薄膜新ポリエチレンフィルム(厚さ3.4ミクロン)で製作した容積5,000m3気球の飛翔性能試験を目的に6月7日に放球されました。本気球は,予定高度43kmまで正常に上昇し,所期の目的を果たすことができました。本実験の成功により,フィルムの性能および接着技術が実証されたことになり,超薄膜フィルムを用いた気球の大型化の目処を立てることができました。

(山上隆正) 


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用語解説
高利得アンテナ
スピンレート
「のぞみ」軌道制御

 6月22日23日の両日に「のぞみ」の軌道修正を行った。火星探査機「のぞみ」は,2002年12月に一度地球に戻り,地球の重力を使って軌道変更して火星に向かうことになっているが,そのためには,この時期にまず大まかな軌道修正を行っておくことが必要である。修正燃料を最小にして,かつ今後に行う補正修正量の和を最小にするためには,のべ3回程度の小修正が必要と計算されている。今回はその第弾にあたる。

 今回の軌道修正は地球から約2億6000万kmも離れた地点で行うため,制御指令を送ってから結果が地球に届くまでに約30分を要する。そのため,制御指令の実行をひとつひとつ確認していくことはできないので,一連の指令をまとめて送信し,結果がうまくいくことをひたすら祈って待つという運用が行われた。また,高利得アンテナの細いビームの中に地球を入れないと通信ができないため,軌道制御に伴う姿勢の変動も極力小さくする必要がある。そのため,軌道制御は2日に分け,その間の姿勢のずれは修正し,また探査機のスピンレートを通常の2倍にして姿勢の安定性を上げた。

 軌道修正はほぼ1年ぶりであったので,手順に誤りが無いように慎重に運用を行ったが,無事に当初の予定を達成できた。次回軌道制御は,今回の制御結果を1ヵ月程度かけて精密に評価してから決められるが,運用感覚を忘れない意味でも,1年後あたりに行うのが適当と考えている。

(川口淳一郎・橋本樹明) 

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用語解説
MTM
TTM
FMとPM
PM総合試験
クライオスタット
音響試験
ASTRO-F MTM試験,PM総合試験終了

 2003年度に打ち上げ予定の赤外線天文衛星ASTRO-FMTM試験(構造試験モデルによる機械環境試験)およびPM総合試験6月中旬に終了しました。 MTM試験は3月初めから4月一杯かけて行なう予定でしたが,最初の段階で主要観測器であるクライオスタットの横一次の固有振動数が数学モデルによる予測よりかなり低いことが見つかり,このままでは試験を続けることが出来ないことになりました。いろいろ努力して調べた結果,クライオスタットとバス部を結合するトラスに問題があったことがわかりましたが,その問題解決にほぼ一月を費やしたため,MTM試験全体が遅れたものです。幸い突貫工事の改修が間に合い,MTM試験を無事終えることが出来ました。この間,3月12日にはつくば宇宙センターにおいて音響試験が行われ,無事終了しています。また,MTM試験最終段階においてリアクションホイール,及び冷凍機の振動がセンサーに及ぼす影響を調べる試験も行われ,FM製作に必要なデータを取得することが出来ました。

 電気的インターフェースを確認するPM総合試験は3月末から約2週間の予定で始まりましたが,ミッション機器,バス機器とも準備不足のせいか問題が多発し,改修して再度行なう事になりました。リターンマッチは5月末から6月中旬にかけて行われ,今度は所期の目的を達成することが出来ました。 ASTRO-Fはこれから11月に予定されているTTM試験を経て本格的なFM製作に入ります。苦労しましたが重要な一つのステップをクリア出来たと感じています。いろいろ御協力して下さった宇宙研の先生方,メーカーの方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。

(松本敏雄) 

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銀河系外ブラックホール連星

図1:IC342のX線像(等高線)を可視光の写真(ポジ画像)と重ねて示したもの。    1993年と2000年でSource1と2の明るさの順番が逆転している。  

 あすか衛星は打ち上げられた1993年に,我々の銀河系から約1500万光年の距離にある渦巻き銀河IC342を観測した。その中にある二つの明るいX線源(図1の source1source2)のX線スペクトルや時間変動を詳しく調べ,これらの天体は少なくとも太陽の10倍以上の質量を持つ天体,しがたって,おそらくブラックホールを含むX線連星であると考えられることを示した。7年後の,本年2月にふたたびこのX線源を観測してみると大変面白いことがわかった。つのX線源の明るさの順番が逆転していた。さらに驚いたことに,X線スペクトルの形も同時に逆転していたのである(図2)。我々の銀河系内の代表的なブラックホール連星である白鳥座X-1は,X線強度が大きくX線スペクトルの形がX線エネルギーの高いところで下に折れ曲がる形を持つHigh状態と,X線強度が小さくX線スペクトルが対数スケールで表した時に真直ぐにのびるLow状態の,二つの状態の間を行き来する。あすかのこの観測結果は,IC342の二つのX線源が同様の状態変化を起こすことを示しているこれは,我々の銀河系内のX線源を含めて白鳥座X-1以外でこのような状態変化をはっきりと捉えた初めての例である。これによって,これらのX線源がブラックホールであることがますます確かになった。しかし,X線の明るさやX線スペクトルについて,簡単には理解できない点が残されており,今後の解析結果が待たれる。

(みつだ・かずひさ) 

図2:Source1とSource2のX線スペクトル。
   スペクトルの形がsource1と2,
   1993年と2000年で逆転していることがわかる。

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熱真空試験
タッチダウンモード
熱設計
小惑星探査機「MUSES-C」の熱真空試験

 「MUSES-C」の熱真空試験が,5月22日から6月4日まで宇宙環境を模擬した大型スペースチェンバにおいて実施されました。ここでは,「MUSES-C」の全ミッションを通して衛星の温度が最も厳しくなる低温,高温モードに加えて,小惑星の観測を想定したマッピング,タッチダウンモード等の試験を行い,熱設計の検証がなされました。その結果,熱解析用数学モデル,および熱計装の考え方に誤りのないことが確認されました。

MUSES-C」の熱設計では,小惑星のタッチダウン時における各観測機器の温度,電気推進(イオンエンジン)の運用時と非運用時の温度,また,再突入カプセルの温度等をそれぞれ要求された性能維持温度範囲内に収めることを基本としています。試験では,小惑星の太陽光の反射や小惑星自身のふく射による熱入力を模擬するための赤外線パネル(写真右の黒色パネル)を準備し,そこを約100℃に加熱して小惑星と探査機との熱結合の評価を行いました。写真では,探査機は電気推進部のヒートパイプの性能を確認するため,横向き状態でスペースチェンバに設置されています。したがい,探査機の下部方向が赤外線パネルに面しています。

(大西 晃) 

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