No.224 |
<研究紹介> ISASニュース 1999.11 No.224 |
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現在進行中の研究テーマは,鞭毛や繊毛がどのような仕組みで屈曲波を作りだしているのか。その運動の制御はどのような仕組みによっているのか。そしてそのような制御機構はどのようにして構築されていくのかということです。材料としては精子及び繊毛をもつニハイチュウなどを用いています。次に幾つかの研究結果を紹介したいと思います。
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我々はマウスやハムスターを用いて,哺乳類精子の運動能獲得と運動調節の機構を調べてきました。成熟したマウス精子は重炭酸イオンによって運動が活性化します。この時,細胞内では65kDaのタンパク質がリン酸化されます。そして同時に微小管間の相互作用が変化し,微小管の滑り速度が上昇します。図2は,細胞膜を除去した精子において,ダブレット微小管が滑り出してループを形成しているところです。矢尻で示された繊維鞘の部分に注目すると,活性化する前の精子と後の精子では異なった反応を示していることがわかります。微小管の滑り速度もおよそ2倍に増加していました。同様のことがカルシウムで活性化したハムスター精子でも観察されました。こちらでは36kDaのタンパク質がリン酸化されます。またこのタンパク質に対する抗体を作用させると,活性化の作用が押さえられることもわかりました。このように,精子の運動活性化には精子鞭毛のタンパク質のリン酸化が重要な役割を演じていることがわかりました。
受精能獲得過程を経ると鞭毛の運動も大きく変わり,超活性化運動をするようになります。図3はそれを示しています。そしてこの変化においても今度は80kDaタンパク質のリン酸化が起こることがわかりました。
このように,運動の変化に伴い,ここでは紹介しなかったものも含めて,様々なタンパク質のリン酸化が起こります。我々は精子の運動の一連の変化の仕組みを,タンパク質のリン酸化を軸にして解明したいと考えています。
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実は精子の運動そのものも重力による影響を受ける可能性があります。精子を遠心分離機にかけると,運動性の高いものが早く沈降するという経験的事実があります。1Gでも,哺乳類精子で調べたところ泳ぐものでは運動をしておらず自然沈降するものに比べると早く沈降することがわかりました。ただし交尾をする哺乳類ではあまり重要な違いでないと思われます。
さてマウスの雄では,誕生後精巣は発達し続け,およそ5週齢で完成された精子が精巣上体に出現します。低重力環境でこのように長期間飼育することは地上では無理です。そこで,遠心飼育機による加重実験によって過重力の影響を調べ,微小重力の影響を推測することにしました。その結果,驚いたことに,加重によって精子形成は抑制されるどころかむしろ促進されるのではないかという結果を得ました(図4)。3Gで遠心飼育を行ったところ,精巣重量はあまり増えないのですが体重は更に抑制されます。その結果,精巣重量/体重の値をとると,1Gのものとは歴然とした差がみられました。しかし精子の性状ではほとんど差がないことがわかります。飼育条件を4Gにすると発育が非常に悪くなること,多世代にわたる飼育では出産数はあまり変わらぬものの大人になる個体が著しく減ることなど,尚多くの課題が残されてはいますが,大変興味深い現象です。微小重力ではどうか。これは現在是非調べてみたい問題です。
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我々はニハイチュウという数十個の細胞のみで出来ている生物の滴虫型幼生が,強い正の重力走性を示すことを見いだし,その性質について調べています。この幼生は,先端にある頂端細胞が高密度な屈光体をもつため,頭部を下に向ける正の重力走性を示します。しかし,図5に示すように,下方へ泳ぐ遊泳速度は,水平方向の遊泳速度に自然沈降を加えた値より遙かに速いものでした。また遊泳方向を重力方向へ変えていく回転速度も,予測される値よりも速いものでした。これらの結果は,物理的原因に加えて,それを増幅する生物学的な仕組みが働いている可能性を示唆するものです。この生物学的な仕組みを明らかにしていきたいと考えています。
(おくの・まこと)
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