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1999年度第2次大気球実験

 1999年度第2次大気球実験は,1999年8月23日から9月8日まで三陸大気球観測所において実施されました。実験当初は天候が悪く予定期間内に計画された全機を放球できるか危ぶまれましたが,全機を放球することができました。

 8月31日に放球したBT5-18号機は,東北大学が中心となり光学的オゾンゾンデによる高度20kmから気球到達最高高度42kmまでのオゾン濃度の観測に成功しました。本実験でオゾン量の経年変化を調べるための貴重なデータの取得や,地上や人工衛星のリモートセンシング技術では観測できない数キロメートル規模の波状構造の観測に成功しました。

9月1日に放球したBT1-3号機は,宇宙科学研究所気球工学部門が世界に先駆け開発した,メタロセンを触媒にした厚さ3.4ミクロンの新しい超薄膜ポリエチレンフィルムで製作した,容積1,000m3の気球の飛翔性能試験を目的に行われました。本実験は,超薄膜フィルムで製作した気球の初めての飛翔試験でしたが,極めて良好の結果が得られ,今後の高高度気球の開発に新しい道を開くことができました。

 9月2日に放球したB50-45号機は,芝浦工業大学が中心になり大気ガンマ線フラックスの高度変化を測定することにより,神岡実験で問題になっている大気中のニュートリノフラックスの絶対値を較正することを目的として行われました。高度32kmまでに4回の異なる高度での観測を行い,各高度で約2,000例GeV領域の大気ガンマ線の観測に成功しました。

 9月6日に放球したB15-81号機は,1998年度新設した大型気球放球装置を用いた放球試験を目的として行われました。本実験は大型放球装置の性能,安定性,確実性の検証と,気球への安全性を調べることでありました。本実験の成功により本装置の性能の実証および今後の大型気球の放球への道を開くことができました。

(山上隆正)

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新設の「大型気球放球設備」を披露

 8月27日,三陸大気球観測所において,1998年度に製作・建設された「大型気球放球設備」の竣工披露が行われました。この設備は,約14mの高さをもつ新気球組立室,ならびに既設の放球場の長さ20mにわたる拡張とその拡張部分に設置した放球用回転テーブルと新型放球装置からなり,今後より大型の気球の放球を可能にし,薄型高々度気球の飛揚を確実かつ能率的にすることを目指すものです。

 佐々木菊夫三陸町長を始めとする三陸町,岩手県,地元関係の方々,施工を担当された企業の方々,総勢二十数名を来賓として迎え,煙雨の中でしたが,竣工式とそれに続く設備紹介が和やかに行われました。宇宙研からは西田所長,大気球実験班のメンバー,管理部関係者が出席しました。三陸大気球観測所としては大窪山受信点の建設以来の大きな施設整備で,三陸の地元の方々に大気球観測所の最近の活動を理解いただく上でも意義のある披露となりました。

(廣澤春任)

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科学衛星「ASTRO-E」の熱真空試験

 「ASTRO-E」の熱設計を検証するための熱真空試験が8月28日から9月5日まで,昼夜連続して宇宙環境を模擬した大型スペースチェンバで実施されました。ここでは,「ASTRO-E」の全ミッションを通して衛星の温度が最も厳しくなる低温および高温状態を想定し,4項目の試験が行われました。その結果,解析用熱数学モデル,および熱計装の考え方に誤りのないことが確認されました。

 「ASTRO-E」の熱設計では,衛星の熱歪み解析を行うため,熱数学モデルの節点数が従来の衛星に比べて多く約7000節点であること,搭載機器のX線CCDカメラ(XIS)や硬X線検出器(HXD)等のセンサの冷却を行うため,アンモニアを冷媒としたヒートパイプを採用したこと,などの特徴があります。

 ヒートパイプの構成は,センサ部から放熱板までの熱輸送を行うヒートパイプと放熱板から宇宙空間への放熱をより効果的にするための放熱用ヒートパイプから成っています。その放熱板には,長さ約2mのヒートパイプが2本搭載されています。従来,ヒートパイプは高温側で多く用いられてきましたが,本熱設計のように大型のヒートパイプが -30℃近傍の低温で使用されることは少なく,宇宙研においても初めての試みになります。

(大西 晃)


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オゾン観測ロケット実験  MT-135-70号機9月7日,日本時間11時に鹿児島宇宙空間観測所より発射されました。8日に打ち上げ予定の71号機は,打ち上げ作業中の雷雲の到来により中止,さらに9日には,警戒区域への漁船の侵入により中止し,10日には宇宙開発事業団の衛星(MTSAT)打ち上げが予定され,結局11日の同時刻に延期して発射されました。71号機のオゾンゾンデはパラシュートの開傘が充分でなく,予定より速く降下しましたが,両機によって最高高度約55キロメートルから約5キロメートルまでのオゾン密度が観測されました。

 今回の2個の高度分布を加えると,1990年MT-135-52号機により初めてオゾン観測に成功してよりこれまで19個の内之浦上空におけるオゾン高度分布が得られたことになります。これまで米国の大気放射収支衛星(Earth Radiation Budget Satellite)に搭載されたオゾン観測器との同時観測も行なわれて,長期間,宇宙にある測定器の検定にも役立っています。現在,これまで得られたオゾン高度分布を使って,オゾン密度の太陽活動度依存性,および環境汚染の影響などが研究されているほか,今後は同時に得られた温度,風向,風速データを用いて大気力学の研究もなされるでしょう。観測担当者はこれまでの研究成果をまとめるべく鋭意作業中!

 打ち上げは昨年に続いて,鹿児島宇宙空間観測所職員によって主体的に行われました。今回も多くの機関にお世話になりました。観測担当者に代わり,お礼申し上げます。

(小山孝一郎)

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