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「はるか」の大型展開アンテナに機械振興協会賞

 宇宙科学研究所はこの度三菱電機株式会社とともに,「はるか」の大型展開アンテナに関して,「科学衛星搭載用大型展開アンテナの開発」と題する業績名のもとに機械振興協会賞を受賞しました。この賞は独創的な研究開発を行い,その成果を実用化することによりわが国の機械工業の発展に大きく貢献した機関,並びにその研究開発の担当者を表彰するというもので,1966年に創始されています。今回は第33回に当たり10件の表彰がありました。授賞式はさる12月3日芝公園にある機械振興会館において行われ,宇宙研,三菱電機両機関の表彰と併せて,廣澤,名取,高野(忠)と,三菱電機の三好一雄氏,井上登志夫氏の5名が,開発担当者として開発に携わった大勢の方々を代表して賞を受けました。写真は宇宙研が賞状と共に贈呈を受けた副賞の楯です。中にあるレリーフはギリシャ時代の陶器のデザインをもとに製作されたものとのことで,道具を用いて工作する大工の真剣な表情と進歩を象徴するコロナ(周辺から放射状に出ている輝き)が作品のモチーフになっていると説明されています。

(廣澤春任)


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S-310-28号機の噛合せ試験

 1998年度第2次ロケット実験で予定されているS-310-28号機の噛合せ試験が11月16〜30日に行われた。このロケット実験の目的は,将来の惑星探査のために新規開発中のレーダーサウンダー(SDR)技術と蛍光線分光(XRS)技術の実証試験である。観測装置としては,この他にも2本のインピーダンスプローブ(NEI ;電子密度計)が搭載されている。

 噛合せ試験のなかで一番苛酷なのは振動試験である。S-310型の試験は旧来からの正弦波掃引方式である。保安主任の峯杉助教授曰く,「ランダム振動の方が音のせいで厳しそうに思えるかもしれないが,共振特性によってはサイン(正弦波)の方が厳しくなり,また,システム試験の加振レベルが単体レベルに比べて低いからといって搭載機器にとって単体試験より楽ということはない」。正にその通りで,やはり一部の機器に不具合が発生して肝を冷やしたが,原因が判明し,応急処置を施して最後のスピンタイマー試験にこぎつけた。この試験はみもので,SDR用のワイヤーアンテナ4本NEI 用のアンテナ2本の伸展,XRS用つの真空箱の開口がタイマーシーケンスに従って次々と行われ,無事有終の美を飾ることができた。

 なお,今回の打上げオペレーションはKSC職員14名を含めて所内主体の編成となる予定で,噛合せ試験にもKSCから下村,日高,感応寺の3名に参加して頂いた。ご苦労さんでした。

(向井利典)


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JPLとの連絡会

 宇宙研と JPL(ジェット推進研究所)の連絡会が,12月7日ロサンジェルス郊外パサデナの JPL にて行われた。出席者は,ISAS 側は西田所長,松尾企画調整主幹以下総勢6名JPL側は Ed Stone所長, Charles Elachi宇宙・地球科学局長,Norman Haynes火星探査局長以下10数名という顔ぶれ。

 ISASJPLは,DSN(深宇宙局)による支援等,古くから親しい関係にある。最近では MUSES-Cで緊密な協力を行っているし,相互の研究者の長期派遣という形での交流も続いている。しかし今回のような所と所の間の公式の連絡会は,これが初めてである。

 ISASおよびJPL双方より,プロジェクトの現状と将来の研究戦略について報告があり,特に MUSES-Cについては協力関係の状況について詳しい情報交換が行われた。

 NASA全体が今や大変「元気」で,圧倒的な技術開発力を武器に中・小型のミッションで世界をリードしつつあるが,JPLはその中核的な役割を果たしている。JPLの当面の柱の1つは火星探査。2年1回の打上げウインドー毎に2機の火星探査機を上げ,2005年にサンプルリターンミッションを計画,2010年代の有人火星ミッションにつなげる考えである。

 また,その他の太陽系探査では,木星の月エウロパ,冥王星/カイパー,太陽などの探査計画が具体化している。技術試験のためにDS(Deep Space)シリーズが計画され,小惑星フライバイ(DS-1)は既に打ち上げられ,火星ペネトレータ(DS-2)も本稿が活字になる頃には打ち上げられているであろう。DS-3以降も,彗星サンプルリターン,複数衛星の編隊飛行,惑星の地震計測などの探査機開発が計画されている。このほかNASAのオリジン計画に沿った望遠鏡による太陽系外の惑星の研究なども項目に上がっている。

 S及びXバンドを中心に運用しているDSN(深宇宙局)も,このような多くのミッションを支えるのに施設不足が予想され,Kaバンドさらには光通信の利用を検討中。

 このようにJPLは極めて活発に宇宙科学の最前線に進出しつつあり,日本にとって手強い相手である。

(中谷一郎)

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DOM-3真空スピン燃焼試験(あきる野施設)


 DOM-3モータは,LPM-DOMモータの推進性能と質量特性を最終確認するために用意された,地上燃焼試験用供試体“3号機”です。モータによる増速度の予測誤差について±0.3%以下という厳しい要求があるため,LPM-DOMモータと同一バッチの材料を使用して同時製造されたものです。

 本試験は,LPM-DOMモータの推進薬量調整のため,DOM-3モータの推進性能および燃焼前後の質量特性に関するデータを高確度,高精度で取得することを主目的としています。そのため,新設のあきる野施設高空性能試験設備(ARC-HATS)を利用して,低圧環境下で2Hzのスピンを加えて実飛翔環境を模擬する“真空スピン燃焼”の条件で行われました。

 DOM-3モータは,12月10日14時に点火され,予想通り約19秒間燃焼しました。得られた28点の計測データと光学記録から,モータの着火・燃焼および ARC-HATS の機能は正常であった事が確認されています。

 今後,取得されたデータから DOM-3モータの推進性能および耐・断熱材焼失量が算定され,その結果を基に LPM-DOMモータ2機の推進薬量調整が行われる予定です。

(徳留真一郎)


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「のぞみ」の新しい軌道計画


 1998年7月4日M-Vにより打上げられた火星探査機「のぞみ」は,5カ月半に及ぶ月・地球周辺の待機軌道滞在を終え,いよいよ火星への旅路についた。

 「のぞみ」は,1998年12月18日第2回目の月スウィングバイを無事に終え,20日夕方には,地球スウィングバイと同時に,推力500N2液エンジンを噴射,続いて21日朝に補正の制御を行い,地球の引力圏を脱して,火星遷移軌道投入に成功した。

 20日の地球スウィングバイ時に,2液エンジンを噴射するに際し,ラッチングバルブが完全に開かず,十分な推力が得られなかった。その結果,21日の補正の制御量が,予定より大きくなり,このままでは火星に到達したときに,周回軌道に入れるための推進剤が不足することが判明した。

 軌道グループは,これに対処するため,新しい軌道を検討し,十分に推進剤に余裕の残る新しい軌道計画を採用することとした。

 この計画によれば「のぞみ」は太陽の回りを3周し,地球に2002年12月2003年6月2回接近してスウィングバイを行い,火星到達は2003年末2004年初めになる。

 火星到着は,当初予定より4年ほど遅くなるが,科学的成果は,従来の計画と同等か,それ以上を狙うことができる。

(中谷一郎)

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ロケット打上げ協力30年感謝式


 国のロケット打上げ機関の事業が円滑に進行するように,種子島周辺の漁場に出漁している漁業者と国との間で覚書が調印されたのは,1968年8月のことでした。その30周年を記念し,さる11月27日,関係5県の漁業関係者にお集まりいただき「協力30年の感謝式」を行いました。式は,文部大臣及び科学技術庁長官からの感謝式(於:科学技術庁)に続き,宇宙科学研究所と宇宙開発事業団からの感謝式(於:芝パークホテル)という順序で進行し,つづいて意見交換会に移りました。会場は芝パークホテルでした。

(的川泰宣)

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LUNAR-A近況

 10月初めから始まった LUNAR-A 総合試験は,スラストチューブへの推進系の取付を終了し,年末には2機のペネトレータモジュール(ペネトレータ本体は,ダミーを使用)を装着した状況まで組み立てられ,機械的な I/Fチェックが行われました。又,併行して,母船/ペネトレータ本体間の通信 I/F試験が行われています。一次噛合せを終了し撤収された ASTRO-E の代りに,小型の LUNAR-A が暫くの間,クリーンルームの主役となります。

 一方,ペネトレータの認定試験(QT)が11月下旬から12月中旬にかけて,アメリカで実施されました。フライトモデル(FM)と同一構成で,又,同一手順で製作されたペネトレータが試験に供されました。FMと同一ですから貫入後のチェックは無線の通信系を介して実施する事になります。水野(貴)/市川特製のハットアンテナをペネトレータ後端のアンテナ部に取り付けてテレメトリデータを吸い上げました。現在得られたデータを詳細に検討しているところです。

 前回の貫入試験(1998年4月〜5月:搭載電池の耐衝撃試験)とは全く逆の季節での実施で,最低気温が零下になり雪まで降る状況下,アメリカ側技術者の真摯なサポートには実験班員一同,心より感謝しています。

(中島 俊)

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「さきがけ」送信電波停止


 日本初の惑星間空間探査機「さきがけ」は,1985年1月8日M-3SII-1号機によって打ち上げられ,1986年3月11日ハレー彗星に700万kmまで接近した後も順調に運用を行ってきました特に1992年1月8日,地球スウィングバイを実施して,その軌道を地球公転軌道に近いものとすることにより「さきがけ」は地球近傍における惑星間空間の磁場プラズマ波動,及び太陽風の観測を続けてきました。

 但し「さきがけ」の送信機出力はわずか 0.1Wと微弱なため,地球からの距離が約1億km以上ではテレメトリの復調は困難で約1年前からはビーコン電波のみを受信してきましたところが地球からの距離が2億kmに達する今年2月には,そのビーコン電波の受信も困難となり,探査機を見失う可能性が出てきましたさらに,太陽輻射圧による探査機の姿勢変化を修正するためのRCS燃料は殆ど枯渇しており搭載高利得アンテナの地球指向を外さないよう姿勢制御を行うことは出来ない状態になっています。そこで,地上から運用・制御が不可能な探査機を,電波を発したままにして放置すべきではないとの観点から,その運用を終了することとしました。

 打上げ14周年にあたる1月8日相模原深宇宙管制室で関係者一同立会いの下,打上げ時の衛星主任平尾邦雄名誉教授が臼田局にホットラインで「送信機オフコマンドを送信せよ」と引導を渡され,「さきがけ」は虚空の彼方へとその姿を消していきました。ちなみに「さきがけ」が再度地球に接近するのは2018年となる筈です。

(上杉邦憲)

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