No.196
1997.7

ISASニュース 1997.7 No.196

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What's Cool?

   山川 宏

 気温35度。ここは南カリフォルニアのパサデナ。今日はNASAジェット推進研究所(JPL)の一般公開で6月始めの土日の2日間で約4万人が訪れる。計4回水分を補給してふらふらになりながら,7時間歩いて全体を見た。火星到着目前の Mars Pathfinder Mars Global Surveyor,もうすぐ土星に向けて飛び立つ Cassini 探査機はもちろん,将来計画の数々の展示がずらっと並んでいた。それらを見つつまわりの人達と同じようにシールやきれいな写真をもらいまくった。宇宙研のMUSES-C探査機に乗る予定のJPLの小さなローバーも子供達に It's cool! と言われながら元気に走っていた。 先日は別の一般公開にも行ってきた。NASA/JPLの深宇宙局の1つで70m級アンテナがあるゴールドストーン局が約20年振りに行ったものだ。バーストーという町を経て車で2時間半。悠久の時間が作り出した砂漠の敷地内にアンテナが点在しており,そのアンテナ間のバスでの移動だけでも約30分。広すぎる。こうしていろいろ見てみ ると,JPLは最近他機関に押され気味と某JPLer は言っていたが,やはり惑星探査の本流でありその経験と底力は圧倒的だ。今回の9ヵ月間の渡航の目的は“電気推進を用いた惑星探査計画に関する研究”である。と言うと聞こえはいいが,実際は,日々の仕事に追われている。もちろん電話や会議は非常に少ないが。そもそも「東奔」は確かにしたが「西走」はまだしていない。少々,グチっぽくなった。  考えてみると,ここに来てから,生活を立ち上げるのに約1ヵ月,その後2ヵ月が過 ぎた。あと6ヵ月で帰国することになる。早いものだ。今は競馬場の近くで公園やゴ ルフ場や大きなショッピングセンタに囲まれた所に部屋を借りている。車も長期間ということで安くレンタルしている。カリフォルニアの免許もやっとのことで取った。 ちなみにこの前,勇気を出して初めてアメリカで髪を切った。事前にいろいろ説明を試みたが容赦なく髪は切られていった。生活は朝7時に車で来て夕方7時に帰るという感じで極めて健康的だ。朝8時頃になるともう駐車場は一杯になってしまうから自然にそうなる。食べ物はというと(異論はあるだろうが)JPL内のカフェテリアを含めて一般においしい。特に中華は,はずれは滅多にない。日本料理の看板を出している店も多いが,中味はどう見ても日本料理じゃないところもある。テレビでは,ウイークデイは毎朝日本のニュース番組をやっていてイチローの打率までわかるし,土日も番組は多い。NOMO を応援してNHKの毛利元就や連ドラを見てしまうので日本にいるのと変わらない。毎朝ジョギングをするなんてことは日本でもやっていなかったが, 先日は久々に運動不足を解消する機会があった。芝生の上に簡易なコートを作っての草バレーだ。JPL全体の千人規模のピクニックのときだった。アメリカで職場全体でこういう催しがあるのが何となく不思議だったが,どうやら毎年やっているらしい。 ちなみにたった4チームではあったが優勝することができ小さなメダルをもらった。  こうして,来てから3ヵ月何とか暮らしている。アメリカのイメージは以前と変わっていない。来た日にすぐにコンピュータ関連の環境をすべて整備してくれるシステムがあり,また夕食に家に招待されたときには映画で見たような理想的な家族がいた。アメリカのテレビは“Cops”等の実録の犯罪物の番組が多く,夜見ていると怖くなる。住んでいる付近には全米で10番以内に安全と言われる町が多くあるが,そこでの事件も多数報道されている。結局,生きるか死ぬかは運だということが良くわかる。この怖い面が強いのは確かだがアメリカの印象は多様だ。逆に,アメリカから見た日本は気になる存在だ。先日,車にガソリンを入れていたら,店の人に出身を聞かれたので日本だと答えると,“Japan is cool, huh?”との一言。良くわからなかったが相槌を打ってしまった。それ以来,日本をどう見て cool という言葉が出てきたんだろうとずっと気になっている。また最近,日本語の感覚も変わりつつある。まだ3ヵ月しか経っていないのに固有名詞を忘れ始めていて,テレビを見ていても俳優の名前が出てこない。日本語を忘れたとはもちろん言わないが,韓国語を聞いていて日本語なのかと間違うことも増えてきた。やはりアジアの言葉は似ているのであった。来て1 〜2年しか経っていない人でも日本語が変化(退化?)していることを考えると,これからの半年でどこまで日本語を忘れられるか楽しみである。

(やまかわ・ひろし)


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