No.194
1997.5

コラム

- Home page
- No.194 目次
- 特集にあたって
- 開発
- 準備
- 飛翔
- 追跡
- 誕生
- 未来へ
- コラム
- 編集後記

- BackNumber

定時は午後8時

 明けましておめでとうございます。
      ……………………………(中略)
 M-3S-1号機打上げが成功と分かった瞬間,実験主任の秋葉先生はM管制室の傍らにいた私に真っ先に握手をして下さいました。
  M-V-1号機でも又……と思っています。
      ……………………………(後略)
 これはある先生に私が送った今年の年賀状である。組立オペレーションまで終了したM-V-1は実に手数 がかかり,時間を大量に飲み込む大きな魔物のような存在に思えた。仮組立及び計器・計装合わせでは123件もの要処置事項,続く噛合せ試験は80時間,制御系総合オペは33時間,組立オペは1日延期+87.5 時間もの残業を私たちに課したのである。特に組立オペでは「定時(作業終了の)は午後8時」と言う言葉が冗談で使われたが,実際本当になってしまった。
 内之浦は暖かいとはいえ,12月の夜ともなれば大扉を開けたままの組立室はとても冷え込み,辺りは真っ暗。組立室だけが皎々としており,その中で連日遅くまで気合いの入った作業が続けられたが,その様子は鬼気迫るものさえ感じられた。
 年が明けて始まったフライトオペでも次々と問題が起こり,5日延期+38時間の残業がまたしても私たちに課せられた。噛合せ試験からずっと立ち合われ,何が起きても沈着,冷静に対応してこられた小野田M計画主任が「ロケットの打上げがこんなに大変だとは今まで思わなかった」と雛田先生にもらされていたことはとても印象に残っている。
 さて,冒頭の年賀状の結末だが,打上げが成功と分かった時,上杉実験主任は真っ先に傍らの私に握手をして下さった。M-V-1のなが〜い日々の疲れが吹き飛 んだのは言うまでもない。

(富田 悦)



#
目次
#
3.1 初陣の発射管制
#
コラム12 カウントダウン
#
Home page

ISASニュース No.194 (無断転載不可)