No.194
1997.5

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4.1 新精測レーダ

 M-V-1の飛翔実験には,これまでこのロケットに合わせて開発を進めてきた新精測レーダをメインレーダシステムとして用いた。レーダは,ロケット3段計器部に搭載されたレーダトランスポンダからの電波を,ほぼ予測した受信レベルで追尾した。レーダデータは,これまでのM-3Sの打上げと同様に,実時間でロケットの飛翔保安と電波誘導システムに用いられた。

 本レーダシステムは,これまでM-3Sロケットで追跡に用いてきた旧精測レーダの老朽化と,M-Vロケットのプルームによる電波減衰に対する危惧から更新計画を始めた。1989年度より調査を始め,1995年10月にKSCの新宮原レーダテレメータセンターが完成した。

 設計に先駆けておよそ以下のような事項についての検討を行った。

 ^受信機能の向上…これは追跡時のロケットプルームによる電波減衰の影響を軽減させる為の処置で,旧精測レーダより8dBの向上を図る。内訳はアンテナ利得で+6dB,受信機能性改善で+2dBとする。

 _測角精度の向上…これは日射による熱変形で生じる指向誤差(旧精測レーダ約1000分の5度)を小さく抑える。主反射鏡(7mφ)の骨組等に,熱変形の小さい複合材(CFRP)を用い,高剛性と軽量化を合わせて図ることで測角精度1000分の3度以下の実現を図る。

 `1次レーダシステムの探知距離の拡張…これはパーキング軌道上の衛星追尾を目標とするもので,旧精測レーダの機能に対して,探知距離で1桁(40dB)の拡張を図る。

 その他計算機システムを介した捕捉運用等について検討を行った。特に1次レーダシステムでは初めての技術を用いる事になるので長時間の検討を行った。探知距離の拡張は,アンテナの大型化,送受信電力の増力,長パルスによるパルス圧縮等の手段がある。

 ISASでは,アンテナの大型化は7mφに止め,残りの所要利得には長パルス(1,000S)の圧縮技術で検討することにした。パルス圧縮方式には長パルスに周波数変調をかけるチャープ方式 と,ディジタル 符号変調をかけて行う方式がある。両方式について検討した結果,受信装置をデジタル化できるメリットを優先し,ディジタル符号変調方式のパルス圧縮方式(相関検知方式)を選択した。

 一次レーダシステムでは,測距精度の低下を抑えて探知距離の拡大を図るために,ディジタル符号(疑似バーカコード)で変調を施した長パルス(1,000S)のパルス(1S)圧縮(相関検出)方式を採用した。この場合抽出された信号パルス(1S)の帯域に含まれる雑音レベルはおよそ元の長パルス(1,000S)の雑音帯域で抑えられる。

 これらの検討を基に基本設計が行われた。

 今回の更新で,旧精測レーダシステムから大きく変更した主だったところは下の表のとおりである。

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 その他運用計算機システムとして,自動捕捉機能(疑似捕捉防止),装置の特性診断,各種シミュレーション試験機能等のソフトが備えられている。このなかで,特に技術的に変更したところは,受信機のディジタル化である。この事で,+6dB以上の受信機の改善が でてきた。ここまで来るには色々の難関があったが,担当メーカ(三菱電機・NEC)の努力で無事M-V-1の追跡をすることが出来た。改めて感謝します。

(市川 満)



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