No.194
1997.5

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5.1 「はるか」の誕生


地球画像提供:東海大学情報技術センタ

 M-Vロケット発射344秒後に第4段キックモータが点火され,MUSES-B衛星は軌道に投入された。それからおよそ35分後,JPLから,サンチアゴ局において14時29分45秒(JST)に衛星からの電波を受信したとの報せが入った。さらに,極地研昭和基地から,16時04分30秒に衛星電波を受信したとの連絡が入った。南半球の遠地点へ向かう衛星をとらえたものである。17時から開かれた記者会見で,打上げは大成功であり,衛星の名前を「はるか」とすること,国際標識番号は97005Aであること,軌道は予定した通りで,軌道要素の暫定値は近地点220km,遠地点21,000km,軌道傾斜角31度であることなどが発表された。

 打上げ同日の20時31分,打上げから約6時間40分後,待望の「はるか」からの電波を,内之浦において受信した。軌道投入直後非可視中に行われた太陽電池パドルの展開とKuバンドアンテナの展開が共に正常であったことを直ちに確認した。

 翌13日,第2可視,及び第3可視のパスで姿勢系を確立し,14日の夜中,第4可視において,近地点を上げるための軌道制御(ΔV)の第1回を実施した。ΔVは順調に行われ,その終了と共に衛星運用の中心は相模原に移った。衛星チームは1ヵ月以上に及んだ内之浦滞在を終えての移動だった。実験場の緋寒桜が咲き,そして咲き終えるのを見た1ヵ月だった。2月16日に第2回のΔV,21日に3回目のΔVを行い,近地点は560kmまで上がった。これで,今後の実験や観測を行っていく上で十分である。

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地球を1周してきた「はるか」からの電波を受けて 
笑顔があふれる衛星テレメータセンター(KSC)


 「はるか」が軌道に乗って以降これまで最大のイベントは,大型アンテナの展開だった。衛星システム,アンテナ,姿勢系,熱系,電源などの担当者達からなる運用チームが,2月23日に一斉に内之浦に移動した。作業の確実を期して,KSCで運用するためである。24日深夜,まず副反射鏡の支持柱の伸展を行った。難しい機構だったが,鮮やかに伸展した。次いで27日午前3時,主反射鏡の展開を開始。慎重に作業を進め,マストの伸展長の大部分を一気に伸ばす,という山場を迎えた。固唾を呑んだ10数分,マストは止まることなく延び,主鏡面は,絡むことなく開いた。開始からおよそ3時間,可視時間の制約のために,仕上げの作業が翌日のパスに残ることになったが,衛星班をはじめ,KSCに集っていた面々,大きな難関を越えたことを,まずここで喜び合った。翌28日には6時から作業を開始,6時20分には展開を完了した。

「はるか」から初の電波天体観測データ届く 
(臼田宇宙空間観測所)

 「はるか」の運用は,打上げ以来ほとんど全て夜中に行われている。長い可視時間のとれるパスは,当分の間,夜中である。B棟の「はるか」運用室では,運用担当メンバーが,昼夜逆転の生活を続け頑張っている。「はるか」の運用では臼田も重要な役目をする。臼田に新設したKuバンドのリンク局と「はるか」との間の通信実験は3月12日から始まった。衛星,地上系とも相当に複雑なシステムだが,実験は初日から順調である。3月24日には,「はるか」のアンテナを初めて電波天体に向けた。天体からの電波が初受信され,データが臼田に降りてきた。

 「はるか」の試験はこれまでとても順調である。今や「はるか」は真に電波天文衛星と呼べるものに近づいている。M-Vロケットの成功をさらに輝かしいものに出来ていることを心から嬉しく思っている。

(廣澤春任)



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コラム18 通称「エリマキトカゲ」
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