5.1 「はるか」の誕生

地球画像提供:東海大学情報技術センタ
M-Vロケット発射344秒後に第4段キックモータが点火され,MUSES-B衛星は軌道に投入された。それからおよそ35分後,JPLから,サンチアゴ局において14時29分45秒(JST)に衛星からの電波を受信したとの報せが入った。さらに,極地研昭和基地から,16時04分30秒に衛星電波を受信したとの連絡が入った。南半球の遠地点へ向かう衛星をとらえたものである。17時から開かれた記者会見で,打上げは大成功であり,衛星の名前を「はるか」とすること,国際標識番号は97005Aであること,軌道は予定した通りで,軌道要素の暫定値は近地点220km,遠地点21,000km,軌道傾斜角31度であることなどが発表された。
打上げ同日の20時31分,打上げから約6時間40分後,待望の「はるか」からの電波を,内之浦において受信した。軌道投入直後非可視中に行われた太陽電池パドルの展開とKuバンドアンテナの展開が共に正常であったことを直ちに確認した。
翌13日,第2可視,及び第3可視のパスで姿勢系を確立し,14日の夜中,第4可視において,近地点を上げるための軌道制御(ΔV)の第1回を実施した。ΔVは順調に行われ,その終了と共に衛星運用の中心は相模原に移った。衛星チームは1ヵ月以上に及んだ内之浦滞在を終えての移動だった。実験場の緋寒桜が咲き,そして咲き終えるのを見た1ヵ月だった。2月16日に第2回のΔV,21日に3回目のΔVを行い,近地点は560kmまで上がった。これで,今後の実験や観測を行っていく上で十分である。