-
通称「エリマキトカゲ」
M-V-1号機では3〜4段接手に搭載されたスピンモータの燃焼中のプルーム,すなわち輻射熱やコンタミ等による衛星搭載機器への影響を防ぐ目的で遮蔽膜が用いられました。これが実験班の皆さんの目に止まり,あのユーモラスな姿のエリマキトカゲと相似していることから,初号機の緊張した組立作業を和らげるかのようにいつの間にかエリマキトカゲと呼ばれるようになったことが事の由来です。
何はともあれ写真をご覧下さい。衛星の部分をエリマキトカゲの頭部と,またキックモータステージの周りに取り付けられた遮蔽膜をエリマキの部分と考えて頂けると,何となくエリマキトカゲの威嚇する姿を思い起こしませんか。余談になりますが,このエリマキ部分の名称を調べたところ,首の周囲の舌骨に支えられた襞状の皮膚飾りで,こうもり傘状に広がる,と解説されているだけで正確なところ分かりませんでした。どなたかお分かりになりませんか。
遮蔽膜はスピンモータのプルームの解析から内径約62cm,外形約52cmの12多角形の形状が求められ,高分子フィルムとそれを支えるアルミニウム製の柱から構成されています。この高分子フィルムには軽量化と耐熱性が要求されたために,膜厚125μm,耐熱温度約500℃のものが選定されました。このように宇宙に送る前の衛星の身を守るために設けられた遮蔽膜の甲斐あって,衛星「はるか」のアンテナを内之浦の夜空に大きく開花させることができました。それは月下美人の花の如く。
(大西 晃)
ISASニュース No.194 (無断転載不可)