No.190
1997.1


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- No.190 目次
- 新年のご挨拶
- SFU特集にあたって
- SFUプロジェクトを終えて
- SFUシステム
- SFU実験
- SFU運用
- 編集後記

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 1981年に新生「宇宙研」が発足したとき,その研究開発課題の中に「有翼飛翔体」と,後にSFUに発展する「小型宇宙プラットフォーム」が入っていた。前者は自前のシャトルを開発しようというものであり, 後者はアメリカのスペースシャトルを乗客として利用する立場であったから,これら2つの課題はロケットエンジニアの私にとっては同じ将来の目標の表と裏であった。表はもちろん有翼飛翔体であったが,結局,裏の方が実現したのは,その方がまだ安心という判断があったからであろう。

 スペースシャトルと私との関わり合いはポストアポロ時代からである。先ず,先生方に無理を言って何とかマーシャル宇宙飛行センターに駐在し,スペースラブ1号の「粒子加速器を用いた宇宙プラズマ実験」,通称SEPACのエンジニアリングという裏方を勤めさせていただいた。当時はスペースシャトルはまだメインエンジンの始動がうまく行かず,スペースラブはマネジメント体制を立て直してようやく設計が進み始めた頃であった。われわれの機器の搭載条件が決まっていない部分があったが,それがかえってスペースシャトルやスペースラブ開発との一体感を生み出して爽快な気分であった。

 「小型宇宙プラットフォーム」の発想の源は,SEPACの高エネルギー実験をスペースシャトルの飛行安全のために軌道上で分離して実行する点にあった。したがって,シャトルで運んで一週間の実験後に回収して貰い,経費も科学衛星一つ位のつもりでいたが,宇宙開発委員会に提案された小型宇宙プラットフォームは通産省と科学技術庁も参加する質量ともより大型のSFUフリーフライヤー計画として実現した。この間,シャトルの方はチャレンジャー事故の余波もあってますます国有化が進み,実に客扱いの悪い乗り物になっていた。シャトルに危険をおよぼす可能性がある宇宙実験はシャトルから離れて行うという最初の発想をSFUの基本設計要求とし,一難を避けたつもりであったが,逆にスタート後は多難の連続であった。

 SFUの設計を進めてみて徹底的に分かったことは,スペースシャトルを計画し,設計した人達の輸送機関としてのエンジニアリングな配慮のなさであった。詳しいことをさておくが,SFU計画の困難の多くはこの点に根本的な原因があったと思う。それゆえに,これから派生した困難を克服してミッションを成功させたSFUチームに一層深い敬意を表するものである。そして,私は,宇宙開発を本気で考えるなら乗客の立場を考えたロケット機を作らねばならないことをこの計画から学んだのであった。

(長友信人)

   設計基本要求

1.スペースシャトルの搭乗員が回収する無人実験・観測フリーフライヤ(SFU)は,有人宇宙システムである。
 
2.SFUの安全性は,NASAや打ち上げ関係者がそれぞれのルールによって決めることである。
 
3.SFUは故障しても,身が半分になっても必ず帰還する事が最優先の要求である。
 
4.SFUは,宇宙に不慣れの不特定多数のユーザーに対応するために,手堅さと発展性を,あわせて持たせるようにする。
 
5.SFUミッション計画は,飛行中でも柔軟性と即応性を発揮できるようにし,予想外の事態においても成果が挙げられるように考慮する。
 
6.SFUの点検整備は,運用作業のひとつとして計画を立て,運用の流れを崩さずに手際良く行えるように機器を設計する。
 
7.SFUは,世界で初めて2カ国の宇宙輸送システムを使うという意味で国際性が要求される。


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