No.190
1997.1


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 SFUが再使用型衛星であることに加え,スペースシャトルで回収されること及び多目的衛星である事から,SFUの構造及び構造設計は我が国の他の衛星に比べて特色あるものとなっている。以下に構造に関する2,3の話題について述べる。

●SFU構造形状

 SFUは再使用型多目的衛星であるので,各種の実験機器を効率よく搭載・整備・試験出来るよう,モジュール方式としてある。SFUは8個の箱を持ち,この箱に搭載される実験機器の組み込み,各種試験は箱単位で行い,完了した後にトラス状のSFU主構体にいわばワンタッチで取り付ける方式としてある。主構体の弾性変形などによりこれらの箱に過大な荷重が入らないよう,これらの箱の主構体への取り付けは全て静定となるよう取り点を3個所のみとし,付け金具にも工夫が施されている。SFU中心部を上下に貫通する円筒状空間の下端のリングはH-による打上げ時のロケットとのインターフェイスであり,5本のトラニオンはスペースシャトルとの力学的なインターフェイスである。

●設計荷重

 荷重見積もりは構造設計上最も重要な項目の一つである。スペースシャトルの場合,積み荷に作用する荷重は,スペースシャトルとSFU等の積み荷の数学モデルを結合し,これに定められた外力を作用させるシミュレーション(柔結合解析)を計算機内で行うことにより求める。最終荷重評価はシャトル打上げが迫った時期にNASAが行う。構造数学モデルは,構造設計の結果から作成できるものであるが,構造設計の元となる荷重を求めるには逆に構造数学モデルが必要となる。従って,通常,先ず荷重を予測して構造設計を行い,これに基づき作成・検証した数学モデルを用いて荷重を求めて予測値以下であることを確認する手順が取られる。この作業の繰り返しが理想的だが現実には許されない。開発初期にNASA提供のシャトルの数学モデルの荷物室の各所に,SFUの暫定的数学モデル計 4台を載せ,暫定的な外力を用いてSFU側で柔結合解析を行ったところ,NASA側から提供されている初期設計荷重を遥かに上回るケースも見つかった。構造設計はこの4台のSFUの柔結合解析結果の最大荷重の1.4倍(主構体については1.2倍)の荷重を前提に行うこととした。SFUのH-による打上げ後にNASAが行った最終荷重評価の結果は,主構造の一部で設計荷重を僅かに越えるものであり,部分的な確認試験を追加するのみで事なきを得たが,逆に言えば絶妙の設計荷重設定であったと言えよう。

●モーダルサーベイ試験

図12. PEMモーダルサーベイ試験の様子(USEF提供)

 シャトルに搭載されたSFUは有人システムの一部を構成することとなるので,SFU構造にも高い安全性が要求され,荷重評価にも高い信頼性が求められる。既に述べたように,シャトルの積み荷に作用する荷重は数学モデルを用いた柔結合解析により求めるので,荷重を正しく求めるためには正しい数学モデルを用いる必要がある。そのため,数学モデルの徹底した検証が要求される。具体的には50Hzまでの全振動モードの振動数,振動モード,減衰率が実測値と一致する数学モデルであることを示すことである。SFUの場合,50Hzまでに40以上の振動モードがあり,これを高い精度で測定するにはかなりの工夫と時間を要した。試験は主構体に静定に接続された箱構造の自由度を拘束して行い,拘束した数学モデルと比較検証を行った後に数学モデルの上でこの拘束を外すなどの工夫を行ったほか,加振レベル最適化等も行った。この様な精密なモーダルサーベイ試験は一筋縄では対処できないことは明白だったので,1990年から1993年に,構造試験モデル等を用いて計4カ月以上をかけて3回に及ぶ予備試験を実施し,試験実施上の問題点の洗い出しなどを事前に行った。その結果,実機(PFM)に付いて1993年4月から7月まで試験を実施し,531点の加速度計と2台の加振器を用いて50Hz以下の42個のモードを抽出するに至った。

(小野田淳次郎)



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