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田中靖郎宇宙科学研究所名誉教授、文化功労者に選ばれる

この度、宇宙科学研究所名誉教授田中靖郎先生は、X線天文学での優れた業績、観測装置や衛星の開発、及びそれらを用いた観測的研究を推進した功績により文化功労者に選ばれました。

田中先生は1953年に大阪大学理学部物理学科をご卒業の後,東大原子核研究所助手,名古屋大学理学部助教授を経て、1972年に後に改組により宇宙科学研究所となる東大宇宙航空研究所教授に着任されました。

名古屋大学時代には、薄膜入射窓のX線比例計数管を開発され、超軟X線で見た意外な宇宙の姿を明らかにするロケット実験をリードされました。

宇宙航空研究所に着任後、エネルギー分解能の優れたガス蛍光比例計数管を開発に成功され、それを用いたロケット観測やX線天文衛星「てんま」の観測によりX線分光観測の分野を大きく発展させました。それは1990年代の世界のX線天文学をリードした「あすか」衛星によるX線分光撮像観測に結実しました。

宇宙科学研究所時代には、田中先生はX線天文グループを率い、「はくちょう」衛星による銀河中心までの距離の制限、「てんま」衛星の鉄輝線によるX線星周辺物質の診断、「ぎんが」衛星が発見した一連のX線新星からのX線スペクトルによるブラックホールの存在証明、「あすか」の鉄輝線によるブラックホール周辺の相対論的効果の検証など、宇宙物理学の数多くの重要な成果をあげてこられました。

衛星プロジェクトの推進にあたっては、「てんま」「あすか」のX線天文衛星だけでなく、太陽観測衛星「ひのとり」もプロジェクトマネージャーとして率いられ、太陽観測分野の発展にも貢献されました。また名古屋大学とライデン大学の共同ロケット実験を通してオランダのX線天文学の発展にも貢献されました。ライデン天文台の研究者がパロマー天文台の研究者とともに発見した小惑星には、田中先生に因んだ4387Tanaka という名前がつけられています。

田中先生は現在も最新の衛星データによる宇宙物理学の研究に取り組んでおられ、先生の変わらぬ卓抜なアイディアと緻密な論理構成は、後進にとって大きな刺激と励みになっています。

田中先生は、仁科記念賞(1985年)、東レ科学技術賞(1989年)、恩賜賞・日本学士院賞(1993年)、James Craig Watson Medal(1994年)、ブルーノ・ロッシ賞(2001年)、マッセイ賞(2004年)などの賞を受賞されています。このたび、文化功労者として叙せられたことに、心からお祝い申し上げます。

2010年10月27日

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