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小惑星イトカワの地名、新たに14個をIAUが承認

「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワは、大きさが500m程度の非常に小さな天体ですが、その表面には大きな岩(ボルダー)やクレーター、そして平らな領域などの多くの特徴があります。「はやぶさ」プロジェクトチームでは、そのような特徴的な地形や地標に名前を付けてミッションや研究活動に使ってきましたが、そのうち14個の名称が新たに国際天文学連合(IAU)で認められました。

認められた地名を表1に示します。これらの名称は、イトカワの表面地形の研究を進めてきた会津大学の平田成准教授と出村裕英准教授らを中心として、「はやぶさ」プロジェクトチームで検討をしたものです。IAUの命名委員会の委員でもある国立天文台の渡部潤一准教授の助言をいただきながら、IAUに提案をして認めらました。すでに、「ミューゼス・シー」、「サガミハラ(相模原)」、「ウチノウラ(内之浦)」の3つの名称は公認されていましたが、さらに14個の名称が加わったことになります。なお、これらの名称は、「宇宙開発・惑星科学に関係する地名」というテーマのもとで選ばれたものです。

今回、新たに認められた名称には、大きな岩(ボルダー)は含まれていません。これは、IAUにおいてボルダーの名称の扱いについて議論が続いているためです。ボルダーのような地標にも名称が付けられるようになれば、さらに新たな名称の提案を行う予定です。

図1に「はやぶさ」が撮影した写真に地名を記したものを示します。また、図2では、イラスト(池下章裕氏作成)に地名を記入してあります。

表1:イトカワ表面の地形に付けられた名称とその説明

クレーター名称として
地名 地名(英文表記) 説明
1 カタリナ(注1) Catalina アメリカのアリゾナにある天文台の名称。地球接近小惑星の観測プロジェクトが進められている。
2 フチノベ
(淵野辺)
Fuchinobe 神奈川県相模原市の地名。はやぶさ開発、運用の拠点であるJAXA相模原キャンパスの最寄り駅の名称でもある。
3 ガンド Gando カナリア諸島にあるスペインのロケット射場の名称。
4 ハマグイラ Hammaguira サハラ砂漠(アルジェリア)にあったフランスのロケット射場の名称。
5 カミスナガワ
(上砂川)
Kamisunagawa 北海道空知郡の町名。微小重力のテスト装置がある。
6 カモイ
(鴨居)
Kamoi 神奈川県横浜市の地名。「はやぶさ」製造の拠点であったNEC東芝スペースシステム株式会社の事業所があった。
7 コマバ
(駒場)
Komaba 東京都目黒区の地名。旧文部省宇宙科学研究所があった。
8 ローレル Laurel 米国メリーランド州の市名。ジョン・ホプキンス大学応用物理研究所(APL/JHU)がある。
9 ミヤバル
(宮原)
Miyabaru 鹿児島県肝属郡肝付町の地名。JAXA内之浦宇宙空間観測所のレーダーサイトがある。
10 サンマルコ San Marco ケニヤ沖合のインド洋上の石油採掘プラットフォームで、イタリアのロケット打ち上げの洋上基地として使われた。
地域名称として
地名 地名(英文表記) 説明
11 アルコーナ Arcoona Regio 「はやぶさ」のカプセルが回収されるオーストラリアの砂漠近くの地名。
12 リニア LINEAR Regio マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所の地球接近小惑星研究のプロジェクト名。(Lincoln Near Earth Asteroid Research)小惑星イトカワを発見した。
13 オオスミ
(大隅)
Ohsumi Regio 鹿児島県の半島名。JAXA内之浦宇宙空間観測所がある。
14 ヨシノブ
(吉信)
Yoshinobu Regio 鹿児島県熊毛郡南種子町の地名。JAXA種子島宇宙センターのロケット発射場がある。
すでに承認済みの地域名称
地名 地名(英文表記) 説明
1 ミューゼス シー(注2) MUSES-C Regio 小惑星探査機「はやぶさ」のミッション名。
2 サガミハラ
(相模原)
Sagamihara Regio 神奈川県の市名。JAXA相模原キャンパスがある。
3 ウチノウラ
(内之浦)
Uchinoura Regio JAXA内之浦宇宙空間観測所がある鹿児島県の旧町名。

注1):ターゲットマーカーの署名集めに協力していただいた惑星協会(Planetary Society)の所在地の地名にもちなんで命名しています。
注2):通称では「ミューゼスの海」とも呼ばれています。正式名称は「ミューゼス・シー」です。

イトカワに付けられた地名[画像クリックで拡大画像]

図1:「はやぶさ」が撮影した写真に地名を記したもの

図2:イラスト(池下章裕氏作成)に地名を記したもの

参考

小惑星イトカワについて

小惑星イトカワ(1998SF36)は1998年9月26日、マサチューセッツ工科大学(MIT)リンカーン研究所・地球接近小惑星研究プロジェクト(LINEAR)が発見した小惑星です。大きさは長さ約500m、幅約300m、サツマイモのような形をしており、自転周期は約12時間、ほぼ地球軌道と火星軌道の間の楕円軌道を約1.5年周期で回っているS型小惑星です。

小惑星命名申請の権利は発見者にありますが、当時の宇宙科学研究所(現JAXA宇宙科学研究本部)が、小惑星探査機「はやぶさ」の探査の対象であるこの小惑星1998SF36に日本のロケット開発の父である故糸川英夫博士の名前を付けてもらうよう、LINEARを通じて国際天文学連合に提案し、2003年8月に承認され「ITOKAWA(糸川)」と命名されました。

その後、2005年に小惑星イトカワは、世界初の小惑星からのサンプルリターンを目指した小惑星探査機「はやぶさ」により探査が行われました。現在「はやぶさ」は、2010年6月の地球帰還を目指し、運用を行っています。

天体や天体の地名の命名について

太陽系内の天体の名称や天体の地名は、研究者間での議論の基盤となる重要な情報であるため、国際天文学連合(IAU)において一元管理されています。
新たな命名を行う際には、まずIAU内のワーキンググループにおいて発見者からなされた命名の申請内容を検討し、地形としての明瞭さ、科学的重要度、地名およびその由来の妥当性、そして既存の地名との重複の有無などが審査されることになります。そして、最終的な承認を得てはじめて公式の地名として使用することができるようになります。
今回の承認によって、小惑星イトカワに関する現在の知見が世界で共有され、今後一層の研究の進展が期待されています。

2009年3月3日

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