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「あかり」赤外線カタログの初版完成と、最新の科学成果

「あかり」の最新の成果をお届けします。全天を遠赤外線と中間赤外線でくまなく観測したデータから、赤外線で輝く天体のカタログ(住所録)の初版が完成しました。また、特定の天体を詳細に観測したデータの解析が進み、その科学的成果の一部が、本年12月に日本天文学会欧文報告雑誌の「あかり特集号2」として刊行される予定です。今回はその中から、年老いた星や超新星と、宇宙空間に漂うガスや塵(星間物質)との間で起きる様々な興味深い営みに関する、三つの研究成果について報告します。

1.「あかり」全天サーベイ赤外線天体カタログ初版が完成

「あかり」全天サーベイの成果として、赤外線天体のカタログ(住所録)の初版が完成しました。このカタログは、これまで天文学者に広く使われてきた IRAS(アイラス)カタログに対し 3倍近い数の天体の情報を含み、今後の天文学研究を導いていく基礎資料になると期待されています。

「あかり」遠赤外線全天サーベイの波長90マイクロメートルで検出された、約64,000個の赤外線天体を天球上にプロットしたもの

2.宇宙の大河を渡る超巨星
−「あかり」が解き明かす赤色超巨星の星風〜星間物質境界の衝撃波−

宇宙を流れる星間物質の大河を、オリオン座の一等星ベテルギウスが横切って突き進む様を、赤外線天文衛星「あかり」がこれまでにない高い解像度で捉えました。この観測により、星から吹き出すガスが星間ガスと激しく衝突し、混じり合う様子が詳しくわかりました。

fig2

3.消えた宇宙塵(うちゅうじん)の謎
−「あかり」による球状星団に漂う冷たいダスト(塵)の探査−

赤外線天文衛星「あかり」による高感度の遠赤外線観測によって、年老いた星の集団である球状星団の、星と星の間が「空っぽ」であることが確かめられました。年老いた星が放出するダスト(塵)によって満たされているはずの星間空間が、なぜ空っぽなのか。ダストはどこへどのように消えていったのか?この結果は、星間空間でのダストの進化や球状星団の進化に大きな謎を投げかけています。

fig3

4.「あかり」が探る大マゼラン星雲の超新星残骸
−「あかり」のデータで初めて見つかったダスト(塵)の成分−

「あかり」に搭載された近・中間赤外線カメラ(IRC)が、大マゼラン星雲中に存在する超新星残骸を捉えました。「あかり」が世界で初めて観測した波長のデータも含めた解析から、超新星残骸中のダスト(塵)に、これまで知られていなかった新しい成分があることがわかりました。このことは、これまで考えられていたよりも多くのダストが、超新星爆発の衝撃で壊されずに生き残ることを示唆しています。

fig4

2008年11月19日

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