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「かぐや」地形カメラが、月の裏側のマグマの噴出活動の長期継続を明らかに 米サイエンス誌(11/7)

このたび「かぐや」搭載の地形カメラによる成果が11月7日(米国時間)発行の米科学誌「サイエンス」(オンライン版)に掲載されることになりました。掲載論文のタイトルは、Long-lived Volcanism on the Lunar Farside Revealed by SELENE Terrain Cameraです。

この論文では、かぐや搭載の10m分解能の地形カメラによって得られた画像データをもとに、クレータ年代学手法(※1)により、これまで十分な研究がなされていなかった月の裏側の海(モスクワの海など)の形成年代を調べました。この結果、モスクワの海の一部領域など25億年前に形成された領域がいくつか見いだされ、裏側においても海を形成するような内部活動が、少なくとも25億年までと、長く継続していたことを、今回の論文で初めて明らかにしました。

なお、今回得られた成果から、月の裏側の海の形成時期に関する新しい知見が得られたことになり、今後の月の進化の研究を進める上で、重要な制約条件となると考えられます。

※1 表面のクレータの個数密度からその場所の形成年代を推定する手法。クレータの個数密度が高いほど、その場所は古いとするもの。
※2 地形カメラの観測機器チーム主研究者:JAXA宇宙科学研究本部 固体惑星科学研究系 助教 春山 純一

図1 モスクワの海の地形カメラ画像

図1 モスクワの海の地形カメラ画像
(モスクワの海:北緯27度、東経147度、直径277km)

図2 図1の拡大画像(左が北西の領域、右が東の領域)

図2 図1の拡大画像(左が北西の領域、右が東の領域)

図3 今回のクレータ個数密度計測結果

図3 今回のクレータ個数密度計測結果

これまでの月の裏側の画像データでは、直径数100m程度のクレータについては、正確な直径や個数密度を調べることが十分に出来ていませんでした。しかし、より高分解能な「かぐや」の地形カメラによって、直径2〜300m以上の小さなクレータが正確に把握できるようになりました。たとえば、これまでの観測データから30数億年前に形成されたと考えられていたモスクワの海(図1)では、東側の地域(図2の東領域)で、クレータの個数密度が小さいことから、更に若く約25億年前に形成されたということが推定されました。

図4 月の表側と裏側の海の領域ごとの形成時期の頻度分布

図4 月の表側と裏側の海の領域ごと(下記※)の形成時期の頻度分布

図4の青色部分は、これまでの研究により推定されている海のそれぞれの領域の形成時期で、赤色部分は今回の研究成果により新たに推定できた形成時期です。月の裏側の海には、25億年前頃に出来た領域もあることが推定されました。

※領域とは、図2の東領域のようにクレータ個数密度計算の対象とした地域を示します。

(参考)論文執筆者一覧

 JAXA宇宙科学研究本部:春山 純一、大竹 真紀子、諸田 智克、本田 親寿
             横田 康弘、安部 正真
 国立環境研究所:松永 恒雄、小川 佳子
 東京大学:宮本 英昭、岩崎 晃
 大阪大学:佐伯 和人
 京都大学:山路 敦
 会津大学:浅田 智朗、出村 裕英、平田 成、寺薗 淳也
 富士通:鳥居 雅也
 ブラウン大学:C.M.Pieters
 スイス宇宙探査研究所:J-L. Josset

2008年11月10日

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