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「かぐや(SELENE)」定常運用へ移行

「かぐや」は、2007年10月18日(日本時間、以下同様)に高度約100kmの月周回観測軌道へ投入された後、2ヶ月にわたって搭載機器(バス機器、観測機器)の初期機能確認を実施しました。

初期機能確認を行った15種類の観測ミッションの状況は別表に示すとおりで、ほぼ計画通りの確認結果が得られたことから、12月21日に定常運用へ移行することを決定しました。今後、定常運用を約10ヶ月間行い、「月の科学」等のためのデータを取得していく予定です。

なお、一部で所期の性能が出ていない蛍光X線分光計および粒子線計測器については、引き続き原因究明を行うとともに、定常運用の中で対処していく予定です。

初期機能確認結果

  1. 主衛星および子衛星の初期機能確認を予定通り終了した。
  2. 各観測ミッションについて、電気的、熱的および観測性能の評価を実施した。その結果を以下に示す。なお、一部の観測ミッションにおいて定常運用への引継ぎ事項が識別されたが、定常運用開始に影響がないと判断したことから、定常運用へ移行する。
観測ミッション 初期機能確認結果 定常運用への引継ぎ事項
蛍光X線分光計(XRS)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、通常観測モードでの利用を予定していた4つのCCDを用いた観測は計測ノイズが大きく、所期の性能が得られない可能性があることがわかった。このため、計測ノイズを地上で低減処理する方法について検討を進めている。また、観測に用いるCCDを1つにするとノイズの影響が改善され、空間分解能は半分程度となるものの目標とする元素分布の観測が見込める。
当面1つのCCDで定常運用を行うこととする。あわせて、事象についての原因究明を継続する。また、計測ノイズの低減処理についての検討を継続する。
ガンマ線分光計(GRS)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、正常に動作し、月からのガンマ線を検出し、元素分布の調査ができることを確認した。
なし
マルチバンドイメージャ(MI)
スペクトルプロファイラ(SP)
地形カメラ(TC)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、正常に動作し、月の地形データおよび分光画像・データを観測し、月の標高を含む地形および鉱物分布を調べることができることを確認した。
なし
月レーダーサウンダー(LRS)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、自然電波観測は地球オーロラキロメータ放射(AKR)や太陽と月の相互干渉による電波が受信できており、所期の性能を有していることを確認した。また、サウンダー観測では、月面エコー波を正常に受信できており、月の表層構造の調査ができることを確認した。
なし
レーザ高度計(LALT)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、正常に測距データを受信し、月の高度の調査ができることを確認した。
なし
月磁場観測装置(LMAG)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、LMAGは所定の分解能で、正常に磁場データを取得できていることを確認した。
なし
粒子線計測器(CPS)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、月面上のラドンが発生するアルファ線および月周辺の放射線環境を計測する高エネルギー粒子のプロトンと電子の検出ができることを確認した。一方、高エネルギー粒子のうち、高エネルギー重粒子、低エネルギー重粒子の検出については、検出開始から約2時間後に検出が困難となるという事象が見られる。これは、信号処理部の電圧制御回路の温度が高温になることにより発生すると推定される。したがって電圧制御回路が低温時には、高エネルギー重粒子、低エネルギー重粒子についても観測データの取得が見込める。
定常運用において、信号処理部の電圧制御回路の温度をモニタしつつ、定常観測を行う。あわせて、事象についての原因究明を継続する。
プラズマ観測装置(PACE)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、月面から飛来する電子および太陽風イオンを計測できていることを確認した。
なし
電波科学(RS)
  • (1)観測性能評価の結果、VRAD衛星(おうな)を使った電波科学のための観測ができることを確認した。
なし
プラズマイメージャ(UPI)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、2つのセンサ(TVIS(可視)、TEX(極端紫外線))は正常に機能し、可視光及び極端紫外線による撮像ができることを確認した。
なし
リレー衛星中継器(RSAT)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、月の裏側の重力場データ取得ができることを確認した。
なし
衛星電波源(VRAD)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、月の重力場データの取得ができることを確認した。
なし
高精細映像取得システム
(HDTV)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、正常に動作して月面や地球を撮影し、その画像データを伝送できることを確認した。鮮明な画像が取得できている。
なし

参考

クリティカルフェーズ終了後に撮影されたハイビジョンカメラによる月の画像
〔アポロ17号着陸地点付近の晴れの海〕

[画像クリックで拡大画像]

国立天文台提供

ハイビジョンカメラで11月19日に撮影されたハイビジョン動画からアポロ17号(1972)の着陸地点付近(中央やや下の南北にあるタウルス山地 (Montes Taurus)に挟まれた部分)を切り出した静止画像です。左側に広がるのが「晴れの海」です。

日付(日本時間) 観測開始場所 観測終了場所 備考
11月14日
22時47分から55分
南緯75度
東経71-92度付近
南緯51度
東経80-88度付近
リオーと南の海
11月19日
3時21分から29分
北緯13度
東経27-32度付近
北緯37度
東経26-33度付近
ポシドニウスと晴れの海
11月22日
3時14分から22分
南緯65度
東経176-163度付近
南緯87度
東経248-90度付近
南極での三日地球の出と金星
11月23日
17時17分から25分
北緯25度
東経327-333度付近
北緯49度
東経325-322度付近
雨の海から虹の入り江とユラ山脈

2007年12月21日

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