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「はやぶさ」の現状について

「はやぶさ」は、2005年12月に生じた燃料漏れと姿勢の喪失により、7週間にわたって交信が途絶していましたが、2006年1月に通信が復旧し、以来、現在までに、探査機の機内昇温、太陽指向の姿勢制御(太陽光圧による新姿勢制御の実施)、スピン速度制御運用、イオンエンジンの試験運転、リチウムイオンバッテリの微速充電等を実施してきました。

現在までの間、2006年11月には、燃料漏洩事故に関連すると思われるスラスタヒータの故障が発生し、上面スラスターに異常な温度低下を生じて、一部残存の燃料が凍結した可能性がみとめられました。このため、2006年12月、不測のガス噴出を未然に防止するため、スラスタの昇温運用を実施しました。この昇温運用では、残存燃料ガスの噴出に起因すると思われる微少なスピン変動が確認されましたが、無事、この運用を終了しました。

また、リチウムイオン電池においては、2005年12月の姿勢喪失時に、過放電のため、セル11基のうち4基が短絡故障していました。同バッテリの機能は、帰還カプセルの蓋閉めに必要であり、機能回復のために再充電する必要がありました。残る7セルの充電を、充電電流を最小限に保ちつつ慎重に実施し、2006年秋までにこれを無事完了しました。同バッテリに関わる安全性評価のために、故障したものと同等の短絡セルを人工的に作り、それを用いて地上試験を実施し、運用の安全性確認も事前に行っています。2007年1月には、探査機内の試料採取容器を帰還カプセル内に搬送、収納し、カプセルの蓋閉め、密封作業(ラッチとシール)を実施、無事にこれを完了しました。

「はやぶさ」の姿勢制御については、これまでリアクションホイール3基のうち2基に不具合が生じていること、化学エンジンの燃料が全て喪失している状態となっていることを踏まえ、2007年2月より、イオンエンジンの運転のための新たな姿勢制御方式を採用、試験を実施し、3月下旬から徐々にイオンエンジンの運転を試みています。このイオンエンジンを運転する上では、その推力方向のアライメントを維持する姿勢制御機能の確立に時間を要していましたが、この方策に目処がつけられる見込みがたったため、4月中旬より地球への帰還に向けた本格的な巡航運転を開始する予定です。

「はやぶさ」の運用は、依然、厳しい状況ではありますが、2010年6月(予定)の地球帰還に向けて最大限の努力を図ってまいります。
※イオンエンジン燃料のキセノン(Xe)残量は30kg強です。巡航運転に必要なXeガス量は20kg以下を想定しており、姿勢制御用のXeガス量を考慮しても、十分に帰還に足りると考えています。

<参考資料>

※2010年6月帰還を想定した計画(案)のうちの一例で、2007年2月出発となっていますが、出発の幅は2007年2月以降数ヶ月間あります。

2007年4月4日

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