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トピックス

太陽観測衛星「ひので」の初期観測成果

「ひので」チーム
JAXA宇宙科学研究本部(ISAS)
国立天文台(NAOJ)
米国航空宇宙局(NASA)
英国素粒子天体物理学研究評議会(PPARC)

「ひので」は、現在,高度約680kmの太陽同期極軌道を周回中で、姿勢制御、電源、通信等、衛星機能はすべて順調です。特に、姿勢安定度は高解像度を狙う望遠鏡にとって十分な性能を確保しています。これまでの試験観測の段階から、様々な新しい科学研究を可能にする画期的なデータが得られています。

X線望遠鏡(XRT)は「ようこう」の3倍の解像度

「ひので」の高い解像度により、これまで分解できなかったX線源が、磁気ループ構造の集合体として分解され、コロナの磁場構造や加熱の様子の把握が可能になりました。

極端紫外線撮像分光装置(EIS)は「SOHO」の10倍以上の感度

解像度の顕著な向上(「SOHO」の3倍)に加え、10倍以上の波長感度により、ドップラ効果による高温プラズマの運動状態の観測などコロナの物理状態の診断に威力を発揮しています。

可視光・磁場望遠鏡(SOT)は地上の10倍の解像度

太陽表面の磁場構造が、これまでにない鮮明かつ像ぶれがない動画像として初めて得られています。人類が目にしたことのない質的に新しいデータであり、太陽表面の詳細な3次元磁場構造やガスの流れを知ることが可能となりました。

「ひので」は、これらの望遠鏡を用いて、太陽で起きているダイナミックな活動や磁場構造の変動を連続的に捉え、コロナ加熱機構の解明など、科学ミッションを遂行するとともに、通信障害や人工衛星故障など、市民生活にも深刻な影響をもたらす太陽フレアの発生の研究にも活かされ、宇宙天気の予測の改善・深化に大きな役割を果たすことが期待されています。
初期科学観測の後、国内外の研究者から提案された観測等を実施し、世界に開かれた軌道天文台として運用します。

ムービー

<全画像ムービー>

[解説]
約12時間毎に撮る太陽全面画像から、12日間の動きを示しています。白く明るく光っている領域は「活動領域」といい、太陽表面では黒点などの強い磁場が存在する領域です。太陽の自転に伴い、1つの活動領域が西のリムに隠れていく様子と、別の活動領域が東のリムから現れてくる様子が捉えられています。太陽全面のいたるところに見える明るい小さい輝点は、活動領域以外でも活発な磁場活動があることを示すもので、興味深い現象です。

<可視光磁場望遠鏡ムービー>

[解説]
黒点が太陽の縁にあるときに、横からカルシウムH線で観測したものです。黒点の周囲で頻繁に増光が発生し、それに伴って物質が上空へダイナミックに噴き上げられている様子が克明に捉えられました。これは、大気や望遠鏡自身による散乱光の影響が極めて小さいことによって、「ひので」可視光望遠鏡が世界で始めて観測に成功したものです。

<可視光磁場望遠鏡のムービー(その2)>

[解説]
地上では大気ゆらぎのため、ほとんどがぶれた画像になってしまいます。この影響は短い波長ほど顕著で、粒状斑や輝点を連続的に観測できるのは非常に稀です。「ひので」可視光望遠鏡は、0.2秒角の高解像度で像ゆらぎのない安定した連続観測ができる世界で唯一の望遠鏡です。

<活動領域のムービー>

[解説]
活動領域に注目した1.5時間程度のムービーです。
多くの筋模様が見えますが、これらは、太陽表面の磁場から上空へ 広がった磁力線構造を示しています。
プラズマは磁力線に捕らわれ易い性質を持っており、また、磁力線毎にプラズマの温度や密度が異なるために、筋状(コロナループ)に見えています。ムービーからは、ループの明るさや形状が一定ではなくて、頻繁な増光現象や噴出しているような様子が見て取れると思います。 このような小さな突発現象のエネルギー解放の仕組みを研究することも、コロナ全体の加熱の仕組みを解く手がかりとなります。

<全面像ムービー(その2)>

[解説]
このムービーが撮られた1週間、「ひので」衛星は画像中央にある活動領域を追尾しながら、連続観測を行っていました。そのためこのムービーでは、太陽の自転にともなって活動領域が東から西へと移動するにつれて、画面上では太陽全体が西から東へと移動して見えています。
中央の活動領域は明るすぎて、色が白く飛んでよく見えませんが、ときおり起きる爆発に伴って、活動領域周辺のループ構造の明るさや構造が変化しているのがよく見えます。太陽コロナの現象では、一見一箇所で起きているような現象でも、周囲の広い範囲に影響を与えたり、逆に影響を受けて発生したりすることが良くありますが、これはその1例といえます。

<解説>太陽観測衛星「ひので」

「ひので」と搭載望遠鏡

「ひので」の科学目的

(1)ロケットの成因を探る
コロナは数100万度の高温で希薄な太陽外層大気です。約6000度の太陽表面がどのようにして上空の大気を数100万度に温めることができるのか?
夜空に輝くどの恒星にもコロナが存在していて、コロナ加熱は天文学の大きな謎の一つです。

(2)太陽磁場活動の起源に迫る
コロナの構造やダイナミックな活動は磁場に支配されています。
太陽磁場の運動学にまでさかのぼって、コロナの構造とそのダイナミックな活動の起源を解き明かします。

(3)宇宙プラズマの素過程を探る
フレア(太陽面爆発)はコロナ磁場のエネルギーを熱やガスの運動に変換する激しい爆発現象です。コロナでは、フレアに代表されるさまざまな爆発現象が頻発します。
この爆発現象で重要な役割を果たしているのは、「磁気リコネクション」と呼ばれる物理過程です。

「ひので」に搭載された3つの望遠鏡(詳細)

X線望遠鏡(XRT)

  • 斜入射反射鏡と2000×2000素子のCCD検出器で軟X線コロナ画像を取得。
  • 解像度は約1秒角。「ようこう」軟X線望遠鏡の3倍。
  • 広い温度感度を持ち、100万度以下の低温側プラズマから1000万度以上の高温側プラズマまでを選択的に撮像する能力を持つ。

極端紫外線撮像分光装置(EIS)

  • 極端紫外線領域にある17-21nm, 25-29nmの2波長帯に存在する輝線を観測する。
  • 解像度は約1-2秒角。
  • 高い感度・高い波長分解能により、大気の運動・温度・密度などの診断能力が大幅に改善。感度はSOHOの10倍以上。

可視光・磁場望遠鏡(SOT)

  • 宇宙空間から太陽を観測する世界最大の高性能望遠鏡(有効口径50cmのグレゴリー式望遠鏡)
  • 回折限界分解能0.2-0.3秒角(太陽面上150-200kmに相当)の画期的解像力。地上の10倍の解像度。
  • 観測波長 380-670nm(可視光域)
  • 望遠鏡で集光された光は焦点面検出装置に導かれ、高い分解能の連続画像を取得するフィルタグラフおよび偏光の分光スペクトルを精密計測するスペクトロ・ポラリメータによって多角的な磁場観測が行われる。

2006年12月20日

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