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「すざく」がこれまでに観測したデータ

銀河団 エイベル2052からのX線放射

「すざく」公開データの一つが、地球から5億光年の彼方にある銀河の集団、エイベル2052です。これは「すざく」X線CCDカメラの画像で、角度にして15分角、直径200万光年もの広がりを持つ高温ガスが見えます。(画像クリックで拡大画像)
銀河団は、我々の天の川と同じようなサイズの銀河が、数百から数千も集まったもので、宇宙最大の天体の一つです。その巨大な重力場によって宇宙空間の希薄なガスが降り積もり、高温になって強いX線を放射します。

左図は「すざく」のX線CCDカメラを用いて、銀河団の内側100万光年(緑)と、それより外側(青)のX線のスペクトルを比較したものです。(画像クリックで拡大画像)
内側では、約2000万度の銀河団ガスからの放射が強く見えていますが、外側にはより低温のガスからの放射が検出されています。これまでの衛星に比べて、低表面輝度のX線放射や1キロ電子ボルト以下のエネルギーの軟X線に対してすぐれた分光性能を持つことが、「すざく」の特徴の一つです。この能力により、この外側領域から、電離した酸素からの2本の輝線がはっきりと検出されています。
これらの放射の大部分は、銀河団ではなく、我々の銀河系内の星間空間にある高温物質によると考えられますが、一部は銀河団周辺からきた可能性もあります。これを詳細に解析し、銀河団に付随する成分を分離できれば、宇宙のバリオン(普通の物質)の大多数がどこにあるのか、という宇宙物理上の基本問題の一つにも、重要な示唆を与えるものと期待されます。

超新星残骸 カシオペア-A (Cas A)からのX線放射

「すざく」公開データの一つが北の空、カシオペア座にある超新星残骸です。300年ほど前に、ここで星が死を迎えたときの大爆発の残骸だと考えられており、地球からの距離は約1万光年です。
右図は「すざく」X線CCDカメラの画像で、直径10光年、4分角に広がった高温ガスの輪郭が見えます。(画像クリックで拡大画像)

左図はX線CCDカメラと、硬X線検出器が捉えたX線のスペクトルで、右側に行くほどより高温、高エネルギーの物質からの放射を捉えています。(画像クリックで拡大画像)
すざくは0.3-600keV(キロ電子ボルト)という広い帯域を高い感度で観測する能力が特徴であり、この天体からも、わずか5時間あまりの観測で、 0.4 keVから 50 keV までのX線を鮮明に捉えており、去る8/26に公開した図とともに、「すざく」の特徴を代表する図です(http://www.jaxa.jp/press/2005/08/20050826_suzaku_j.html参照)。
図中、緑の線と文字で示したのは、超新星の爆発によって数千万度にまで暖められたガスからの放射で、鉄や硫黄、シリコンといった元素からの特徴的なX線と、なだらかな放射で表されます。この成分は、緑の線で示す様に途中で折れ曲がるはずなのですが、これまでの観測からより高いエネルギーまで放射が伸びていることが示唆されていました。
今回「すざく」は、この高エネルギーX線を今までにない精度で確認しました。青い線で示したこの放射は、この超新星の残骸のなかに、極めて高いエネルギーを持った粒子が沢山存在することを示しています。太陽の表面爆発(フレア)時にも見られる高エネルギー粒子の加速現象が、極めて大きな規模で起きていると考えられています。より多くの天体をこのような高精度で観測することで、超新星からのエネルギー解放の仕組みが明らかになると期待されます。我々の銀河の進化を支配する、宇宙のエネルギーと物質の輪廻の詳細が分かるようになるかもしれません。

2005年12月2日

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