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ふたたび88万人の方々へ

名前をきざんだフィルムを包み込んだターゲットマーカー

既報のとおり、さる2005年11月21日にイトカワ表面に着地したターゲット・マーカーには、打上げ前にISASと日本惑星協会が実施した「星の王子さまに会いに行きませんか ミリオンキャンペーン」に応募した88万人の人々の名前が、アルミ箔に刻まれています。半導体の微細な構造を作っていく特殊な技術を駆使して、0.03 mm角の大きさのアルファベットで綴られています。
あの頃、さる大阪の人から電話が来て、「ミリオン・キャンペーンというからには、100万円もらえるのか」と質問され、「いいえ、100万人の名前を集めたいのです」と、謝りながら答えたことを懐かしく思い出しています。

キャンペーンに当たっては、松本零士さんにはもちろん、いろいろな人にお世話になりました。東京ドームに長嶋茂雄さんを日本宇宙少年団(YAC)の子どもたちが訪ねたときは、快くターゲットマーカーへの登録を承認サインし、「私も一緒に広い広い宇宙へ飛び立ってみたいよ」とはるか彼方の宇宙への想いを語ってくれました。あの年セ・リーグのトップを独走していた星野仙一監督も、「お、ホシノ王子さまか。こいつぁ縁起がいいや」と、気持ちよく登録に応じ、当時の阪神の一軍、二軍選手全員の登録もしてくれました。国民栄誉賞の鉄人・衣笠祥雄さんもやさしく登録してくれました。

ただし、私たちの意向としては、有名な人を中心にするというのではなく、「国民的な応募」にしたいということでした。近々亡くなったお母さんの名前でもいいかとか、ペットの名前でもいいかとか、あるいは3ヵ月後に生まれる赤ちゃんの「仮の名前」でもいいかとか、色とりどりの問い合わせがありました。そして、夫婦とか恋人同士とか家族全員・クラス全員・学校全員などの「ぐるみ」応募の多かったことが、狙い通りだったので嬉しかったのを憶えています。

外国の人たちについては、カリフォルニアの惑星協会が責任をもってとりしきってくれました。さすがに系統的で、以下の人たちもターゲットマーカーには登録してくれています。
ニール・タイソン(ニューヨークのヘイデン・プラネタリウムの館長)
ポール・ニューマン(俳優)
ウェズリー・ハントレス(以前のNASAの宇宙科学のトップ、現カーネギー研究所)
ビル・ナイ(アメリカの有名なサイエンス・エデュケーター)
ブルース・マレー(ボイジャーの頃のJPL所長、著名な惑星地質学者)
ルイス・フリードマン(惑星協会事務局長)
アン・ドルーヤン(作家・プロデューサー、カール・セーガン夫人)
ジョン・ログズドン(世界を代表する宇宙政策学者)
クリストファー・マッケイ(著名な惑星科学者)
スティーヴン・スピルバーグ(映画監督)
バズ・オルドリン(アポロ11号で月面に降り立った飛行士)
ジャック・ブラモン(パリ大学の著名な惑星科学者)
レイ・ブラッドベリ(SF作家)
アーサー・C・クラーク(SF作家)
フランク・ドレーク(宇宙人探しで有名)
ジョン・ロンバーグ(アメリカを代表するスペース・イラストレータ)
などなど。

そして、今回の着地に際し、多くの方々から感謝の手紙やメールが届いています。今後もみなさまの感想をお寄せください。折に触れて紹介させていただきます。
郵便の場合の宛先は、〒229-8510 神奈川県相模原市由野台3-1-1 JAXA宇宙科学研究本部 対外協力室。メールの場合は、isasero@isas.jaxa.jp へどうぞ。

松本零士さんと長嶋茂雄さんが、読売新聞から感想を求められた際の感想。
──いつか子孫がイトカワに来て私の名前を見つけ、感慨にふける。その姿を想像するだけで楽しい。(松本零士さん)
──壮大な航海がいよいよクライマックスにさしかかり、胸をワクワクさせています。アポロ計画にも匹敵する宇宙研究開発史上の壮挙です。(長嶋茂雄さん)

また着地の夜には、中日ドラゴンズの川相昌弘選手からも、嬉しいメールが届きました。
──知人に「星の王子さまに会いに行きませんか」に参加しませんか、と誘われた時には、こんなに凄い探査計画だとは想像も出来ませんでした。子供の時、宇宙ってどこまで続くのだろうと想像して、無限ってなんだろう凄いな、と思った記憶があります。今現実に私達家族全員の名前が遙か彼方の惑星に届けられ、永遠に宇宙に残ったことを知り、大変光栄に感じております。肉眼では見えないものでしょうが、夜空を探してみたい気持ちで一杯です。関係各位の皆様の御努力に心からの敬意を表すと共に、一言感謝の言葉を申し上げたく、メールをお送りさせて頂きました。おめでとうございます。そして、ありがとうございました。中日ドラゴンズ内野手・川相昌弘──
川相選手は、ニッポン放送1242KHzでも「星の王子さまキャンペーンの話をしてくれ、「世界88万人の名前が書かれたボールが小惑星に届けられた」と、正確にポイントをつかんで語ってくれました。北海道から沖縄まで、はやぶさの話題が流れました。

品川のある中学校では、全校生徒に対し「はやぶさ」をテーマにしたテストが行われたり、世田谷のある小学校の父兄参観日には、「はやぶさペーパークラフト」と小冊子「はやぶさ君の大冒険」が配られるなど、全国的な反響がある中で、実にたくさんの方々からメッセージをいただきました。

お許しをいただいていないので、お名前を省略しますが、いくつかをここに掲載させていただきます。
──不眠不休の大活躍、御苦労様です。はやぶさの大活躍、本当に感動しております。スタッフの皆さんの情熱がそのまま伝わってきます。今まさに、人類の探査史に新しい頁が書き加えられましたね! キャンペーンの責任も無事果たせましたし、残るサンプル確保の問題も、必ずや素晴らしい結果になると信じております。頑張れ、はやぶさ! (神奈川在住の数学者)
──本当に「はやぶさ」は頑張っていますね。88万人の署名入りターゲットマーカはイトカワへ着地したようで、署名した人たちは心から喜んでいると思います。(実は我が家も署名しました。)先駆的な仕事とはこういうものだという見本のようですね。川口プロマネ以下皆さん本当にお疲れで大変と思いますが、25日も頑張ってほしいと思います。 (青少年育成団体役員)
──不眠の連日でお疲れ様です。ともかくターゲット・マーカーの着地大変おめでとうございます。孫達には伏せて家内と二人申込しましたので、小学生の孫達に説明しても中々理解してくれません。最終目標の達成をお祈り申上げます。(近畿在住の男性)
88万人の方々には、今後永遠に「イトカワ」先生と一緒に過ごしていただくことになります。それを聞いて「しまった!」と思う人がいなければいいのですが……(笑)。

2005年11月23日
JAXA宇宙科学研究本部 対外協力室長 的川 泰宣

2005年11月23日

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