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X線天文衛星ASTRO-EII打上げに向けた準備を開始!
〜M-V型ロケット6号機の第1組立オペレーションを終了〜
(2005年2月、鹿児島宇宙センター内之浦宇宙空間観測所)

固体ロケット技術は、旧宇宙科学研究所(ISAS)の前身である東京大学宇宙航空研究所が1970年にわが国初の人工衛星「おおすみ」をL(ラムダ)-4S型ロケットで打ち上げて以来、その後、旧ISASのM(ミュー)シリーズに継承され、その集大成とも言うべきM-V型ロケットの完成をもって成熟の域に到達したと言われる。

しかし、2000年のM-V 4号機や2003年のH-IIA 6号機の失敗が、固体ロケット技術の不備を教えるものであることをわれわれは認めざるを得ない。

一方、固体ロケットの持つ利点、すなわち構造効率が高く、中小規模で大推力を出すことができ、保管や取扱が簡便であることは、今後も変わらず求められていくであろうし、それゆえに、われわれは今後とも固体ロケット技術を継承しさらに発展させていかなければならない。すなわち、人類が宇宙開発に着手して約半世紀経過した今、過去に行われた 研究と開発の努力を無駄にせず、技術の歴史の詳細な整理と正しい理解を持って次の世代へ伝え、将来の技術発展に結び付けなければならない。

現在JAXAは、相次ぐ失敗の反省に立ち、ロケットおよび衛星の信頼性の確保を急務として位置付け、H-IIAの再開第1号(7号機)の成功に向けて、旧NASDA/NAL/ISASの垣根を取り払い、JAXA全体で信頼性向上活動に取り組んでいる状況である。

M-V型ロケットは、旧ISASが宇宙科学探査機の打上げ用に開発した3段式の固体ロケットで、機体構成の単純化や重力損失を極力抑えた性能の向上などを設計方針として、1990年から開発が始められ、1997年2月の初号機で科学衛星「はるか」、続く1998年7月に3号機で火星探査機「のぞみ」の打上げに成功した。

しかし2000年2月のX線天文衛星ASTRO-Eを載せた4号機では、第1段のスロートインサートが飛翔中に徐々に破損脱落したことに端を発する不具合で、結局打上げは失敗に終わった。原因究明と対策検討の後、スロート材料の変更に伴う再開発および、改良型第2段モータの開発を経て、2003年5月、5号機で小惑星サンプルリターン探査機「はやぶさ」の打上げに成功し、復活を果たした。

ASTRO-EII振動試験

今後もM-V型ロケットは我が国の基幹ロケットの一翼を担い、宇宙科学研究本部(ISAS)の科学衛星を搭載して打ち上げられる計画であり、2005度に打上げ予定の6号機はJAXA発足後初めてのM-V型ロケットの打上げとなる。

M-V 6号機で打ち上げられるASTRO-EIIはASTRO-Eの再挑戦であり、日本の5番目のX線天文衛星としてISASが計画する衛星である。ASTRO-EIIは分光能力に優れ、軟X線からγ線までの広い帯域を観測できることが特徴であり、ブラックホールや超新星といった、宇宙の高エネルギー現象を解明できるものと、多くの科学的な貢献が期待されている。

JAXA宇宙基幹システム本部は、M-V 6号機の組立オペレーションを2005年1月25日から、射点である鹿児島宇宙センター内之浦宇宙空間観測所において開始した。

組立オペレーションは、M-Vプロジェクトマネージャーを実施責任者として行われるロケット系の準備作業で、「第1」と「第2」に分けて実施される。第1組立オペレーションの主な内容は、各段ノズルの駆動試験、第1段ロケットモータとノズル及び後部筒の組付け、第2段ロケットモータとノズルの組付け、ノーズフェアリング(NF)分離機構等の組立、 NF/ノズル周り/後部筒その他の各種計装作業などである。

M25ノズル駆動チェック

1段目前部ノズル組付け

組立オペレーションの実験班は、臨時的に編成される組織であり、そのメンバー構成はJAXAと関係メーカーの混成である。これは永年旧ISASで培われてきたロケットの組立/打上げの体制を踏襲するものであり、直接ハードウェアを扱う「現場」の中で、宇宙開発と宇宙工学研究を育むことができる優れた方法である。その有効性は歴史が認めるところであるが、今後のJAXAの活動を進める上で、他プロジェクトにおいても大いに活用する価値のある手法であると思う。

2005年2月9日、M-V 6号機の第1組立オペレーションは無事終了した。機体組立はきわめて順調だった。第2組立オペレーションは2月23日に開始される予定である。引き続き着実で安全な作業を進め、ASTRO-EIIの打上げを成功に導きたい。

(文責: 第1組立オペレーション実験主任 嶋田 徹)

“M-V型ロケット(1号機から4号機まで)”
 宇宙科学研究所報告 特集 第47号、 2003年3月,宇宙科学研究所,ISSN 0285-9920

2005年2月23日

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