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打上げ前の最終(総合)試験中! 〜X線天文衛星「Astro-E2」〜

X線天文衛星「Astro-E2」は、ブラックホールに吸い込まれるガスや、超新星爆発の残骸など、宇宙の高エネルギー現象を探る衛星です。現在、来年に予定される打上げへ向けて、最終の試験である「総合試験」が行われています。
この試験では4月からまる9ヶ月をかけて、衛星の組み上げと動作や性能の確認試験を行います。なかでも代表的なものとして、Astro-E2の特徴でもある望遠鏡の「首のばし機構」の動作チェック、衛星丸ごとの低温/真空中での動作確認、打上げを模擬した振動/衝撃試験などが上げられます。
また、打上げ後の運用を模擬した長期試験を行って、地上ソフトウェアや、運用のノウハウなど、衛星システム全体の確認も重要な点です。

7月末現在、Astro-E2衛星はJAXA宇宙科学研究本部の相模原キャンパスにあるクリーンルームの中におり、後で搭載を予定しているいくつかの装置を除いて、ほぼ完成状態まで組み上がっています。
8月には、この衛星を丸ごと巨大な真空槽にいれて冷却し、宇宙空間を模擬した環境においてその性能を確認する「熱真空試験」が予定されています。

衛星そのもののくみ上げと同時に、その観測へ向けた準備も進められています。
Astro-E2は、世界中の研究者に開かれた宇宙天文台です。観測対象の選定も世界中からの提案に基づいて行われ、データも一定期間後に誰にでも使えるように公開されます。8月の中旬には、最初の一年の観測提案の公募が締め切られます。多くの提案の中から、Astro-E2の得意とする世界一の分光能力を活かした、科学的意義の高いものを選りすぐり、打上げ後の観測に備えます。

高い分光能力とは、音でいえば「優れた絶対音感」のことです。これを活かせば、例えば、宇宙の高温プラズマが秒速数百kmという猛烈な速度で激しくぶつかり合う様を、おなじみのドップラー効果を活かして、世界で初めて詳細に見ることができます。
例えばブラックホールに落ち込んでゆく物質の速度を実測したり、宇宙最大の天体「銀河団」が、1000万光年のスケールで互いに衝突/合体するようすをとらえることができます。

この衛星の性能をフルに発揮させ、優れた科学的成果を得るためにも、事前の試験は極めて重要です。人工衛星は一度打ち上げると修理が不可能だからです。
衛星が着々と組み上がっていく姿は、我々開発に携わる研究者や技術者にとって、胸が躍る光景であると同時に、身が引き締まる思いもしてきます。

総合試験の一こま。
太陽電池に強力な照明をあて、実際に電力を生成して、衛星を動作させる試験の様子です。
手前に太陽電池、奥にあるのが衛星本体で、その足下で作業者が発生電流をモニターしています。
太陽電池は、まだ衛星には取り付けていませんが、電源ラインはつなげてあります。
照明の明るさは太陽の1/3程度ですが、照らされるとかなり暑く、陰に隠れていないと目が痛いです。
科学衛星の総合試験を代表する美しいシーンの一つです。

反対側から見たところです。手前が衛星本体、奥が太陽電池です。

2004年8月9日

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