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熱気に溢れた講演会「ブラックホールの謎に挑む」

 さる2月27日(金)、お台場の国際交流会館において、天文学の最前線を紹介する講演イベント『ブラックホールの謎に挑む』(JAXA主催)が、ノーベル物理学賞受賞者リカルド・ジャッコーニ博士を迎えて開かれました。会場には350人を超す方たちが参加され、次々に展開される魅力ある講演で熱気に包まれた講演会となりました。
 的川泰宣JAXA執行役の挨拶につづいて、井上一教授(ISAS研究総主幹)が行った基調講演「新しい“窓”で探る、知識の宝庫=宇宙」では、宇宙科学とX線天文観測の意義と概況が簡潔に説明され、その中で1979年の「はくちょう」に始まって、「てんま」「ぎんが」「あすか」と衛星を軌道に送って世界のX線天文学をリードしてきた日本の大きな貢献、2005年1月に打ち上げられるASTRO−E2衛星への意気込みと期待について紹介されました。
 つづいて、X線天文学を切り拓いた功績により2002年にノーベル物理学賞を受賞したジャッコーニ教授の特別講演「X線観測で解き明かした宇宙の素顔」が行われました。1962年当時誰も予想しなかったX線で輝く星を最初に見つけ、天文学の草分けの一人となったジャッコーニ教授は、その最初の劇的発見の頃、また1970年に初のX線天文衛星Uhuruを打ち上げた頃の多産だった時代を生々しく紹介し、「まるで自然と電話がつながっているようだった」と印象的な表現をしました。そして日本が華々しく世界のX線天文学に登場した時代、アメリカでは「日本語を勉強しないとX線天文学の研究はできないぞ」などといわれたエピソードが語られました。また、ジャッコーニ教授がハッブル宇宙望遠鏡による研究をリードして以降宇宙科学の発展についても興味ある話題が提供されました。
 次の講演は、牧島一夫教授(東京大学大学院)の「ブラックホール天文学の最前線」でした。会場の人々の関心が深いこのテーマを、要領よくテンポよく解説した講演でした。重い星の最期にできるブラックホール、活動銀河核の中心にある巨大ブラックホールにつづいて、その二つをプロセス的につなぐと見られる中規模ブラックホールの話。その証左として、巨大ブラックホールに飲み込まれつつあると思われる星が最近観測されたことなど、興味のつきない話でした。
 次々と繰り出される最前線の話題を、総合司会の的川教授は「知恵熱が出そうだ」と表現し、以上3人のスピーカーに田中靖郎ISAS名誉教授(現マックスプランク研究所客員教授)を加えて、サイエンスライターの野本陽代さんをコーディネーターにお願いして、トークショー「ジャッコーニ博士と宇宙を語ろう」が行われました。
 トークショーでは、科学的成果に関することよりも、発見に際しての人間としての喜びなどに重点を置いたトークがつづき、宇宙科学の魅力が別の面から引き出されました。
 結びの言葉で、「大正時代の終わりにアインシュタインが日本に来て札幌で行った講演会に、北海道大学の医学部の先生が出席していて、同伴の夫人のおなかに赤ちゃんがいた。程なく生まれた人がジャッコーニ博士とともにX線天文学を築いた小田稔先生です。この会場におなかの大きいお母さんがおられたら、大事に育ててください。ジャッコーニ博士の記念すべき講演会の胎教を受けて、その子は将来世界の宇宙科学を率いるようになるでしょう」と述べた司会者の言葉が、満場の笑いと喝采を呼び起こしました。

2004年3月1日

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