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「のぞみ」に関してESA(ヨーロッパ宇宙機関)とカナダ宇宙庁から暖かいメッセージ

宇宙科学研究本部の火星探査機「のぞみ」の火星軌道への投入断念に関して国内外からいろいろな、E-メールやお手紙をいただいていますが、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のドーダン長官とカナダ宇宙庁のケンドール科学計画部長からの手紙をご紹介します。

JAXA理事長 山之内秀一郎様

 「のぞみ」が火星軌道投入を数日後に控えたときに失われたことに対し、お悔やみ申し上げます。
 「のぞみ」と私どもの「マーズ・エクスプレス」とは、科学上の「タンデム・ミッション」であり、互いにほぼ垂直な軌道から火星の外気圏、磁気圏、電離圏における未知の諸過程を探査するはずでした。こうした理由から、JAXAとESAは、私たち二つのミッションの科学的成果を最高のものとするために、互いに共同研究者や学際的な研究者を交換し合いました。
 私は、ESAの科学計画局の同僚と協議した結果、失われた「のぞみ」による観測へのささやかな埋め合わせではありますが、予定通り日本の科学者に「マーズ・エクスプレス」による観測に関わっていただきたいと考えます。
 おわりに、私たちの協力が現在と未来を通じて続くことを念願しております。

ESA長官         
ジャン・ジャック・ドーダン

JAXA宇宙科学研究本部長
鶴田浩一郎様

 「のぞみ」の現状と火星軌道投入を断念するという難しい決断をくだされた事情をお知らせいただきまして、有難うございました。
 私どもは、貴方及び貴方のチームのみなさまと同様、この結末にひどく落胆していることはもちろんですが、この事態の原因は、完全に貴方がたのコントロールの外にあり、探査機の打上げ前に実施された試験やリスク解析では予見できなかったことをはっきりと理解しております。また、あの激しい太陽プロトンから受けた不具合から立ち直るためにこれまで約18ヵ月にわたって「のぞみ」チームが払われた大変な努力に感謝の意を表します。さらに、最初のバルブの問題から放射線によるダメージに至るまで、貴方がたが不具合と闘ってきたミッションのあらゆる局面を通じて、常に私どもにその詳細な情報を積極的に知らせてくださったことを非常に有難く思っております。事態が深刻な時にさえ、貴方がたは国際的なパートナーたちに対して、探査機の状況と貴方がたの修復作業がめざしている事柄について、知らせる努力をしてくださいました。そのことにも謝意を表します。たとえば今週、中谷、早川両教授が私どもを訪問し、詳しく「のぞみ」について説明してくださいました。深く感謝するものです。

 私たちは、ISASがこれまで、限られた予算で大変困難なミッションに挑むことによって大きな飛躍を遂げられたことを、よく理解しております。しかしながら、大きく飛躍すると同時に、貴方がたはリスクに対して常に非常に慎重に対処して来られました。私たちが太陽系探査のペースを加速しようと思えば、「より小さく、より安価な」ミッションを惑星に送りつづける必要のあることは、ここカナダ宇宙庁では極めて明確なことであり、そうした努力を続けてこられた貴方がたは大いに賞賛されるべきであります。貴方がたは「のぞみ」によって大きな計画的な挑戦をされ、その挑戦から退いたばかりです。この撤退によって貴方がたの再挑戦への意欲がくじまれることのないよう期待しております。

 すでにご存知の通り、カナダと日本は、過去においては「あけぼの」「はるか」「のぞみ」などの宇宙科学のミッションにおいて長期にわたる協力を成功裏に成し遂げてきました。また最近の議論においては、検討中のePOPやVCOミッションについての協力についても話し合っています。カナダはISASのミッションに参加させていただくことに心から感謝しています。両国の宇宙科学者たちは、、共通の科学的目標を数多く有しております。今後ともこの協力が維持され強化されることを切望するものです。私どもが新たな提案をする際には、ISASこそ優先的なパートナーであります。このことに関しては私どもを信頼してくださって大丈夫です。

 終わりに、カナダに対する長く積極的な貴方ご自身の友情に対し、カナダ宇宙庁とカナダの科学者コミュニティからの感謝を述べさせていただきます。貴方の友情は、私どもの大きな喜びの源でありつづけました。両国の科学者はこれからも認識の境界をさらに押し広げていくでありましょう。貴方がたの将来のプログラムを私たちが強力に支持しつづけることを信じていただきたいと念願しております。

あなたの誠実なる     
デービッド・ケンドール 
カナダ宇宙庁 科学計画部長

2004年1月9日

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