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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第419号

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ISASメールマガジン   第419号       【 発行日− 12.10.02 】
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★こんにちは、山本です。

 週末の台風17号は、偏西風に押されて、急速に速度をあげて日本列島に被害を残して行きました。

 週明けの相模原は、10月なのに気温30度近くまで上昇し、クールビズが終了してエアコンも入らない状態で、扇風機やウチワで暑さをしのぎました。

 ところが、今日・火曜日の予想最高気温は22度で、体調が追いつきそうもありません。

 皆さんも、体調管理に気をつけてください。

 今週は、能代ロケット実験場 場長の安田誠一(やすだ・せいいち)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:能代ロケット実験場開設50周年を迎えて
☆02:内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開(11月11日(日))
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★01:能代ロケット実験場開設50周年を迎えて


 この度、能代50周年を迎えられたことは、宇宙科学研究所そして実験場関係者にとって、本当に喜ばしいことだと思います。


 1962年に糸川先生をはじめとして、この地に実験場を設置されて以来、数々の困難が有ったと思います。

移転当初は海岸にテストスタンドだけが設置され、作業準備室や計測室などはプレハブ小屋で代用していました。ケーブルは常設ではなく、その都度重いケーブルを引きまわし、そして機材の運搬は人力で賄っていたものが多く、本当に厳しい作業環境だったようです。そのような中でL(ラムダ)型の第1段モータの燃焼試験は実施されています。


 施設、設備は、L型ロケットやM(ミュー)-4S型などの大型ロケットの開発に向けて徐々に増設されて、ロケット組立塔やテストスタンド、管制室、計測室などが完成し、試験環境が整えられました。

私自身は、1981年から実験に参加させて頂き、最初の実験は、M-3SII型のSB-735(補助ブースタ)モータの燃焼試験でした。既に設備は充実しており、良い環境でしたので、作業になると、先輩方々からおまえたちは良いなあとよく言われたものです。

冬期は、先の作業環境に加えて強風、そして猛吹雪の中での外仕事のため、顔面まひや体は芯まで冷え込んで本当に辛かったようです。私自身も冬期の環境は嫌というほど経験しています。風速20m強による砂嵐、そして吹雪が吹きつけることで、顔は痛く冷たいし、体も冷え切って感覚がなくなるのです。何度か挫折しそうになり、能代には行きたくないと思ったほどです。

そういう中での楽しみは、旅館に帰って入るお風呂でした。なかなか理解頂けないと思いますが、本当に幸せを感じるひとときでした。寒さで硬くなっている体が少しずつ、ほぐれてゆき、その時の心地よさは表現できません。まさに至福の時でした。

更に、風呂上がりのビールが私たちの体を癒してくれます。それが私たちの能代業務を持ち堪えさせてくれたといっても過言ではありません。能代に行くと酒を飲むという話を聞いた方は多いと思いますが、それには理由があったということをお伝えしておきます。


 ロケットの開発は、L型から始まって、M-4S、M-3C、M-3H、M-3S、M-3SII、M-V型まで、宇宙研で打ち上げた衛星、探査機用ロケットは殆どのものが能代実験場を経ています。

液体エンジンは、1977年から開発が始まって、1トン、7トン、10トンと段階を経て高性能エンジンを開発しており、これらはいつでも実機エンジンとして使えるものに仕上がっています。その技術力は後述する高頻度再使用型ロケットの開発に活かされています。


 その他の実験としては、月ペネトレータ貫入実験、有翼飛翔体の滑空試験、推進系の基礎開発の場として活用されました。


 現在は、高頻度再使用型ロケット、エアーターボラムジェットエンジン、イプシロンロケットの要素試験、N2O/エタノールエンジンの開発が進行中で、推進系の更なる発展を目指して取り組んでおります。

 JAXA外では、大学や他機関との共同研究をすすめており、今後においては、更なる拡大を目指しております。


 広報、教育関連では、実験場での実験体験を希望される地元高校生(インターンシップ)や中学生の燃焼実験見学会、講演会などにも積極的に取り組むことで、宇宙に対する理解を深めて頂いております。これについては、能代市も積極的にご協力下さっている活動ですので、能代市民をはじめとして多くの方々に参加して頂くよう呼びかけております。


 以上、能代ロケット実験場開設からの50年を紹介させて頂きましたが、今後の活動においても、研究者、技術者、そして実験に係るすべての方々との連携を密にして、研究開発の更なる発展を目指します。

また日頃よりご尽力頂いている能代市協力会、浅内地区協力会、関係機関についても、引き続きご支援頂けるよう努力してまいります。


(安田誠一、やすだ・せいいち)


能代ロケット実験場
http://www.isas.jaxa.jp/j/about/center/ntc/index.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※