宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASメールマガジン > 2010年 > 第308号

ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第308号

★★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ISASメールマガジン   第308号       【 発行日− 10.08.17 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★こんにちは、山本です。

 旧盆明けの相模原キャンパスは、大気球や観測ロケットの実験班が出かけてしまい、何となく閑散としていますが、見学スペースは毎日賑わっています。

 15日(日)の丸の内オアゾには 朝早くから(新聞報道によると)「はやぶさ」帰還カプセル展示目当てに、1800人もの行列ができたそうです。

 整理券が配られて。1日の見学者は8400人。1時間当たり700人の見学者が入場できたようです。

 今週は、宇宙輸送工学研究系の國中 均(くになか・ひとし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「SFU」から「はやぶさ」へ、そしてその次
☆02:観測ロケットS-520-25号機打上げ日程決まる
☆03:「はやぶさ」が最後に撮像した地球画像の壁紙
───────────────────────────────────

★01:「SFU」から「はやぶさ」へ、そしてその次

 2010年6月17日、回収した「はやぶさ」カプセルをノンストップで日本へ輸送するため、ビジネスジェット機グローバル号が軽快にランウェイを滑走し、快晴の青空へ離陸してゆく(注1)。それを豪州ウーメラ空港にて見送った。14年前の記憶と重なる。そうなのだ、「宇宙からの往復ミッション」は私にとって2回目のことだった。

 1996年3月5日、米国サバナ港からコンテナ船カリフォルニア・サターン号が、朝焼けの中、ゆっくりと運河を下ってゆく(注2)。大西洋からパナマ運河を通って、太平洋を渡って一路日本へ、宇宙実験・観測フリーフライヤー「SFU」( Space Flyer Unit )(注3、注4)を送り届けるのだ。

 「SFU」は、八角形をした当時日本最大4トンの衛星であり、12種の宇宙実験を搭載して、1995年3月18日にH-IIロケットにより地球周回軌道に投入された。私は、搭載実験の1つ「2次元展開高電圧ソーラーアレイ実験」のインテグレータとして、また射場臨時責任者、スーパーバイザー元締め・追跡局調整係・スペースシャトルとのランデブー時のテレコマ主任、そしてケネディー宇宙基地における回収班員として、本ミッションの始まりから終わりまで参画した。設計時の重量軽減努力、打ち上げ直前の燃料漏洩、追跡のための深夜勤、軌道上でのスラスタ故障、太陽電池収納失敗/分離、などなど苦難の連続だった。
(特に、自分が担当する高電圧ソーラーアレイ実験の失敗には打ちのめされた。「SFU」が設計理念として掲げる「電気・熱・構造に関するstand-alone設計」を盲信し、周辺機器とのインターフェースへの配慮が行き届かなかったことが悔やまれる。(注5))

 ようやく10ヶ月の宇宙運用を終えて、スペースシャトル72号機により1996年1月17日、地上回収された。これをNASAから身請して、実験サンプルの取り出しや安全化処理、デブリ調査をして、コンテナに詰め込んで米国から海路送り出したのであった。栗木先生、長友先生、都木先生、清水氏に教えをいただき、なんとか成功裏に任務を終えた。

 1993年の「小惑星ネリウス サンプルリターン工学系90日study」から始まる「はやぶさ」(当時 MUSES-C)にあっては、私はイオンエンジン主任・復路のサブプロマネもどき・豪州回収班なんでも係として終始を見届け、何としてでも成功に導く義務を負っていた。でなければ、「SFU」にてお教えいただいた諸先生方に申し訳が立たないではないか。マイクロ波放電式イオンエンジンを駆り深宇宙から自力で帰って来たのだから、少しの進歩はお認めいただいて、なんとか及第点をいただけたであろうと思う。栗木先生には直接報告させていただいたが、すでに故人となられた長友先生(注6)、都木先生にはその機会を逸し、たいへん残念である。清水氏には7年間に及ぶイオンエンジン運用や豪州政府対応等、今回も尽力を頂戴した。もう1つの仕事、次を担う世代をinspireし、heritageとmotivationを引き継ぐことは十分果たせたであろうか、ここが気がかりでならない。

(國中 均、くになか・ひとし)

注1:ウーメラ空港から飛び立つジェット機
注2:新しいウィンドウが開きます ISASニュース1996年4月号(No.181)ISAS事情
注3:新しいウィンドウが開きます ISASニュース1997年1月号(No.190)SFU特集号
注4:新しいウィンドウが開きます 国立科学博物館・地球館にて常設展示中
注5:新しいウィンドウが開きます 宇宙実験・観測フリーフライヤー(SFU)の成果報告
注6:新しいウィンドウが開きます ISASニュース2007年8月号(No.317)
   新しいウィンドウが開きます ISASニュース2007年8月号(No.317)PDFファイル

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※