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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第215号

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ISASメールマガジン   第215号       【 発行日− 08.10.28 】
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★こんにちは、山本です。

 一週間ほど前のことです。私の使っているノートパソコンからかすかに「カリカリッ」と音がしました。時間もなかったので、週末にやっとチェックソフトでパソコンの状態を点検したところ

 【ハードディスクに不良ブロック】があると診断されてしまいました。

 去年もハードディスクが壊れたこのノートパソコン。そろそろ替え時なのでしょうか?

 そうは言っても、すぐに買い替える訳にもいきません。もう少し、『ダマシダマシ』使いましょう。

 今週は、固体惑星科学研究系の大竹真紀子(おおたけ・まきこ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「かぐや」が観測を開始してからの毎日
☆02:「かぐや」地形カメラでシャックルトンクレータ底部表面に水氷の不存在証明
☆03:秋葉鐐二郎名誉教授、IAAのフォン・カルマン賞受賞
☆04:フェルミ衛星がガンマ線で輝く新しいパルサーを発見
☆05:今週のはやぶさ君
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★01:「かぐや」が観測を開始してからの毎日

 私は、「かぐや」という名前の月を周回して観測する探査衛星に関わっています。「かぐや」は、月の起源と進化を明らかにするという目的で昨年9月に種子島宇宙センターから打ち上げられ、その後14個の機器を使った観測が行われている事をご存知の方もいらっしゃると思います。

 一般に、探査衛星はその準備段階から実際に衛星を設計、製作し、たくさんの試験を繰り返して打ち上げるまでに長い年月がかかります。実際、「かぐや」も私の場合でも計画のメンバーに加わってから打ち上げるまでに10年が経っていますし、メンバーの中にはもっと長く関わっている方もたくさんいらっしゃいます。ただ今回は、その長い年月の間にどんなに多くの苦労と(少しの?)楽しいことがあったのかという事ではなく、これまでの10年と昨年「かぐや」が打ち上げられてからでどのぐらい私の毎日が変わったのか、というところのお話をしたいと思います。

 この文章を読んでいただいている皆さんの中で、学生の方、社会人の方、ともかく毎日朝起きてから通学、通勤される方に質問ですが、朝起きて通学、通勤して授業なり自分の仕事に就くまでの時間って楽しいですか?

 私の場合は少し前まで、必ずしも毎朝楽しくて仕方ない、と言うわけではありませんでした。誰だって、楽しいことばかりの毎日ではないと思います。私の場合も、あまりにも長く感じられる打ち上げまでのさまざまな準備の中で、ともすれば日々のこまごまとした事に流されてしまい、楽しさを感じられなくなっていた所がありました。ところが、です。昨年9月に「かぐや」が打ち上げられた後、無事月の周りを回る軌道に入り、続いて今年の1月頃から私の関わっている観測装置も本格的にデータを採り始めて、私の毎朝は、がらりと変わりました。

 どう変わったのかと言うと、毎日朝起きてからがものすごく楽しくて仕方がなくなったのです。なぜなら、毎日通勤して相模原キャンパスにある自分の机に座ってがんばって解析をすれば、その分だけ毎日、これまでに世界中の誰も見たことが無い月面を(私が関わっている観測機器は月面を9つの波長で撮像するカメラです)次々と見ることができ、それらを自分なりに研究すれば毎日新しい発見ができるのです。

 もちろん、一つ一つは小さな発見なのですが、それでもどんなに小さな事であっても、今まで誰も知らなかった事がどんどん解ってくる、こんなに楽しいことってあるでしょうか。そして、さらにそういう小さな発見を積み重ねて行く事で、もしかしたらものすごく大発見が出来るかも知れないのです。そういうわけで、私の毎朝は一変しました。

 どのぐらい変わったかと言うとまず朝起きるととにかく少しでも早く家を出たくなります。朝ごはんをゆっくり食べている場合でもテレビを悠長に見ている場合でもありません。そして家を出て電車に揺られている間も昨日の研究の続きが気になります。淵野辺駅を降りてバスに乗って相模原キャンパスに着き、やっとバスを降りて、そしたらもうすぐです。最後は私の前にバスを降りた方々を廊下で右からすばやく早足で追い越して、エレベータを待たずに階段を駆け上がる、という具合です。

 こんな毎日を先日、ある大先輩の方にお話しする機会があったのですが、「そんな気持ちには長い人生の中でそうそうなれるものでは無いのだから、 大切にしないといけないね。そして、自分だけで楽しんでいないで、早く 成果(論文)を(出して)ね。」
というお言葉を頂きました。まさにその方のおっしゃる通りで、楽しんでばかりはいられません。

 そういうわけで、ごく最近は、「かぐや」に長らく関わってこられた多くの方々や応援してくださっている多くの方々に感謝しつつ、今度は楽しさ半分、あせり半分で毎日自分の机を目指しています。

(大竹真紀子、おおたけ・まきこ)

http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/kaguya/index.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※